「これをしていいのだろうか」「怒られないだろうか」と迷うことにエネルギーを使えば、肝心の「新しいアイデアを生むこと」に使うエネルギーは枯渇する。

 また、 無印良品のMUJIGRAMが2000ページにも及ぶのは、社員を縛るためではない。 「迷う」という無駄な脳のアイドリング時間を、極限までゼロにするためだ。

 基本動作を「自動化」して初めて、人間の脳は、目の前の顧客を喜ばせるという高度な「創造」に向かうことができる。 型があるからこそ、型破りができる。 何もない荒野を自由に歩けと言われるよりも、舗装された道路の上を走るほうが、人間ははるかに遠くまで行けるのだ。

“言い訳は「きちんと追い詰める」”の真意

 では、明日からリーダーは何をすべきか。

 まずは、「言い訳」への対処法を変えることだ。 松井氏は、《言い訳は「きちんと追い詰める」》」と説く。 言葉は強烈だが、意味するところは非常に論理的だ。 松井氏の書籍『無印良品の、人の育て方 “いいサラリーマン“は、会社を滅ぼす』を読んだ上で、私の解釈でわかりやすく例として出すと次の通りになる。

 部下が「忙しくてできませんでした」と言い訳をしたとする。

  三流のリーダーは、「言い訳をするな、気合でやれ」と精神論で返す。

  二流のリーダーは、「そうか、大変だったね」と慰めて終わる。

  しかし、一流はここで「なぜ忙しかったのか?」と問う。

「他の仕事が入ったからです」
「なぜ他の仕事が優先されたのか?」
「A部長から急ぎだと言われたからです」
「なるほど。では、私の指示とA部長の指示、どちらを優先すべきかという『基準』が組織として曖昧だったことが原因だ」

 ここまで掘り下げて初めて、問題は「個人の怠慢」から「組織のバグ」へと変換される。 

 言い訳を追い詰めるというのは、相手を精神的に追い込むことではない。 「忙しい」という言葉の裏にある、業務プロセスの欠陥を突き止めるまで、質問を止めないということだ。

 松井氏が去った後も、良品計画は成長を続けている。 それは、カリスマ経営者がいなくなったからといって揺らぐような、柔な組織ではないからだ。

  仕組みが文化として定着し、組織のDNAになっている。 誰が社長になろうと、誰が店長になろうと、無印良品は無印良品であり続ける。 これこそが、リーダーが最後に残すべき「作品」ではないだろうか。

「懇親会よりサッカー観戦」部下の発言に無印良品トップがブチギレ→危機からV字回復した意外な出発点