下請けの委託業者を切る
働き方改革とは逆の方向

 3時30分に再会すると、持出は139個に増え、配完も96個に増えている。宅急便センターからコンビニにくるまでに10個ほど配達を済ませてきたのだという。残は24個。あとは、この残の個数をどこまで減らせるのかが勝負だ。小谷が説明する。

「これまでなら、午後の便で積み増してくる個数は多くて15個ぐらいだったんですよ。それが今日は、30個近く積んでいます。これは、先月、下請けの委託業者を切ったからなんです。委託のドライバーは1個当たり200円前後で運んでくれるんですが、これを僕らが運べば、委託費が浮くという考えなんですよね。これって、働き方改革とは逆の方向に進んでいると思うんですけれど」

 小谷と顧客のやり取りが、助手席にまで聞こえてくることもある。

「最近、小谷さんの顔を見ないんでさびしいと思っていたんですよ」

「今晩は寒くなるっていうので、奥さんも気をつけてくださいね」

 戻ってきた小谷の手には温かい缶コーヒーが3本載っていた。そのうちの1本を私にくれる。

「あの家の奥さんは、IT企業で事務をしているんですね。ネコを4匹飼っていて、いつもは旦那さんが荷物を受け取るんです」

 午後7時、小谷は最後の便の荷物を積みに宅急便センターに戻る。帰ってきたとき、持出は145個になっていた。配完が124個。持戻16個。残5個。小谷は細い道に車を停め、荷物を手にしてこう言った。

「ここは、着物を縫っている50代の娘と、80代のおばあちゃんの2人暮らしなんだけれど、この数日いないんですよね。旅行にでも行ったのかな。大丈夫かな……」

 結局、この日も不在で、荷物は持戻となった。7時30分前のこと。

 その5分後に、小谷の携帯に再配達をしてほしいという電話が入る。ヤマトでは、働き方改革後、残業時間を抑制するため、午後7時以降になるとドライバーは再配達の依頼を受けなくていいようにしていた。しかし小谷はあえて電話に出て、配達を済ませた。明日運ぶ自分のために1つでも多くの荷物を“落としたい”のだ。