「うちが当時、受け取っていた運賃がかりに270円だったとすれば、それを20円ほど上げてほしいという腹積もりで交渉に臨みました。けれど、アマゾンは、宅配便の運賃をさらに引き下げ、しかもメール便でも判取り(判子をもらうこと)をするようにと要求してきたのです。アマゾンの要求は度を越していました。いくら物量が多くても、うちはボランティア企業じゃない、ということでアマゾンとの取引は打ち切るという結論に達しました」
この交渉が行われたのが12年で、翌13年になると、佐川急便はアマゾンの宅配業務から撤退する。
その撤退した佐川急便からアマゾンの荷物を引き受けたのが、宅配業界トップのヤマト運輸である。ヤマトの受け取る運賃は280円だったといわれる。
同社社長の長尾裕(現在、ヤマトホールディングス社長)は17年春、経済誌のインタビューに答え、アマゾンの荷物を引き受けた理由をこう答えている。
「(アマゾンジャパンとの取引について)言っておくと、よく佐川急便さんが捨てたものを拾ったみたいな言い方をされますけど、そんなつもりはさらさらありません。私に言わせれば、一番無責任なことをやったのは佐川さんじゃないのという気がしてしょうがないんです。そもそもアマゾンさんの荷物は、日本通運さんがやっていました。日通さんがやっていたのを、全部安い値段でひっくり返したのは佐川さんです。/それを(佐川が)全部ほったらかして、(ヤマトがやらなければ)誰が運ぶのですか。(アマゾン側から)何とか助けてくれないかというお願いがあって、力になろうという判断をしたわけです」(「日経ビジネス」17年5月29日号)
長尾は、社会的責任を感じてアマゾンの荷物を運ぼうと決断したと語っているが、営利企業同士の商取引なのである。佐川急便が手を引いたのなら、他にアマゾンの荷物を運べる宅配業者はヤマトしかいない。業界3位の日本郵便が引き受けるには、荷物量が多すぎたからだ。
(アマゾン側から)何とか助けてくれないかというお願いがあったというのなら、なおさらである。運賃交渉の主導権は、ヤマト運輸にあったはずだ。にもかかわらず、ヤマト運輸は280円という低運賃でアマゾンから請け負っている。それはなぜか。







