ワーキングメモリを鍛える二つ目の方法は、人との「会話」。相手の話すことを“聞き”、自ら返答を“言う”必要があるからだ。それも親しい人だけでなく、上司や部下、初めて会う人など“非日常”の会話ほど効果的という。

「家族や親しい人と話すときにはほとんどが日常会話ですよね。けれども外出して人と話すときは、日常会話を“抑制”して敬語を使う機会があるでしょう。それがワーキングメモリを鍛えるのです」

「実はバイリンガルの人たちは、年を取っても認知症を発症しにくいという報告もあります。英語を使っているときは日本語を抑制し、日本語を使っているときは英語を抑制するということが日常的に行われているためではないかと考えられます」

 加齢とともに日常の生活が単調になると、ワーキングメモリが衰えがちになるという。だからこそ、意識してさまざまなジャンルの人との会話を楽しみたい。

三つ目は「描画」
覚える対象をイメージする

 苧阪教授が勧めるワーキングメモリを鍛える行為、三つ目は「描画」だ。

「読書や会話は“言葉”が主体ですよね。もちろん言葉も重要なのですが、それでは脳の一部分しか使えていないのです。脳を満遍なく使うという意味で言葉だけではなく、絵で対象物を捉えることをしてみましょう」

 リーディングスパンテストで高い得点を得る人たちの多くは、覚える対象をイメージするなどの工夫をしているという。

 そこで苧阪氏の研究室では、イメージすることを手助けする目的で実験参加者に記憶すべき単語の絵を描いてもらった。こうした描画を繰り返すと、リーディングスパンテストの成績が上昇したのである。

「これは脳の言語以外の領域を刺激し、あるものに注意の焦点を当てる、つまり取捨選択して必要な情報に注意を向けることがうまくできるようになったのでしょう。こうしたイメージするという視点は、ワーキングメモリの働きを維持するにはとても重要です。朝起きたら今日の予定ややるべきことを一つひとつイメージするのも、鍛えることに効果的だと思います」