遺体の引き渡しをせねばなりませんが、妻はまだ夫の死について認識できていないようです。この妻に引き渡すわけにもいかず(遺体を引き渡して放置されたら今度こそ事件です)、夫の親族に遺体を引き渡すことにしました。
老老介護の果てに2人とも
遺体で見つかる同居腐敗事案
検視の現場では、このような老老介護の事例がよく見受けられます。遺体が腐敗していく死者自身も悲惨ですが、認知症などで同居の家族の死を理解できず、強烈な腐敗臭すらも認識できない状況というのも痛ましいものがあります。
介護している家族が先に死亡してしまい、介護される側もやがて衰弱して死亡し、2人とも遺体が腐敗した状態で発見されるというケースもあります。
また、8050問題(80歳代の親が引きこもりなどの50歳代の子どもの生活を支えるという、引きこもりや引きこもりを抱える家庭に関する社会問題)の行き着く先なのでしょうか。
検視の現場でも、90歳代の母親が同居の70歳代の息子の死亡を認識できずに通報が遅れたことや、80歳代の父親と50歳代の息子の2人暮らしで、お互い干渉せずに暮らしていたら父親がいつの間にか亡くなっていて、遺体が腐敗するまで気づかなかったということもありました。
子どもが引きこもりで部屋からろくに出てこないため、同居の高齢の親の体調不良の把握や介護に手が回らず、親が糞便垂れ流しのような状態で放置されて遺体で発見されることもありますが、こうなると状況により保護責任者遺棄致死罪に問われます。
そして、このような事案では、家族が近隣住民の手助けや行政・民間などの介護サービスを遠慮したり拒んだりしているケースが多いのです。第三者の目がなかなか届かず社会から孤立しがちというのも同居腐敗事案の大きな要因だと思われます。
家族同居での孤独死・孤立死とも言える同居腐敗事案がもはやニュースで取り上げられないほど、少なくとも私は驚くこともなくなってしまうほど、珍しくない光景になりつつあるのです。
2024年の行方不明者のうち
認知症高齢者は約2万人
検視の現場では、認知症の高齢者が徘徊をしたのちに、さまざまな場所で行き倒れているケースを見てきました。







