高齢者施設の新規開設が陰りを見せるなかで、ホスピス住宅だけが急増している。有料老人ホームの倍の金額が稼げるからだ。特集『最適な介護施設選び&老人ホームランキング』(全21回)の♯19では、ホスピス住宅のもうけの仕組みと、医師会の反発を恐れる業界の最新動向を追った。(ダイヤモンド編集部)
がんの末期患者や神経難病を患う人などが対象
特養や有料老人ホームは入居を断ることが多い
開設ピークが過ぎた介護施設の中で、一人気を吐くのが「ホスピス住宅」だ。施設の形態は住宅型有料老人ホームやサ高住で、がんの末期患者や難病患者の看取(みと)りを行う。ホスピス的な老人ホームである。
介護付き有料老人ホームでないのは、訪問看護などの外付けのサービスを活用するためだ。入居者ががん末期の場合は訪問看護で診療報酬が算定でき、難病の場合は障害に関する報酬も使えるため、住居費を合わせると入居者1人当たりの月の売り上げは100万円ほどになる。通常の有料老人ホームの倍の金額だ。
入居者の月額費用は、10万~20万円の住居費に1~3割負担の介護費や医療費を足して、平均すると40万円くらい。平均2、3カ月の入居期間だから、負担は100万円前後で済む。
がんの末期患者や神経難病を患う人は、治療で改善する見込みがなければ、早く病院から出てくださいというのが厚生労働省の方針である。
在宅医療がその主な受け皿になるが、がんの末期は痛みがひどくなる。在宅医や訪問看護師との連携がうまく取れなければ、介護する家族の苦労は並大抵ではない。
一般的な有料老人ホームや特養も、医療重度者の入居は断ることが多い。1人暮らし、または家族がいても頼れない人にとって、ホスピス住宅は最後のとりでなのだ。
医療従事者にとっても、ホスピス住宅は好都合だ。緩和ケアに寄り添いたいという看護師にとっては働きがいのある職場であり、在宅医も患者がホスピス住宅に移ったとしても継続して最期まで関わることができる。病院に入った場合は、その段階で在宅医の手からは離れてしまう。
次ページでは、参入が相次ぐホスピス住宅のなかでも、特に注目を集めているアンビスホールディングスの快進撃などについて詳報する。