一般的な組織は、「What(何を)」や「How(どのように)」から発想を始めることが多い。どんな商品(What)をつくり、それをどうやって顧客に販売していくか(How)を考えるわけだ。

 一方で、シネックは「Why(なぜ)」という目的や信念を共有することこそが、人や組織を動かすカギだと主張する。現に、アップル、スターバックス、ユニクロといった世界のトップ企業は、この「Why」を中心にした発想が組織全体に根づいている。

ライト兄弟が世界で初めて
飛行機開発に成功した理由

 このことを説明する際に、よく引き合いに出されるのが、「ライト兄弟」と「サミュエル・ラングレー」の話だ。両者の成功秘話・失敗秘話こそが、「Why(なぜ)」を共有することの重要性を鮮やかに物語っている。

 ライト兄弟といえば、「人類で初めて飛行機開発に成功した人物」として、その名を知らない人はいないだろう。

 一方で、サミュエル・ラングレーについては、聞きなじみがない人もいるかもしれない。だが当時は、ラングレーのほうが周囲から尊敬を集める著名な科学者で、ライト兄弟の名を知る人など、ほとんどいなかった。

 ラングレーは、当時のアメリカ国防総省から多額の研究費と、一流の頭脳を持つ研究チームを与えられ、ライト兄弟同様に、「世界初の飛行機の発明」に取り組んでいた。

 だが、彼のプロジェクトは失敗に終わった。

 一体なぜか。おそらくそれは、飛行機づくりに対する「内発的な動機」が、彼らには不足していたからだと思われる。

 ラングレーの目標は、飛行の成功そのものよりも、その成果を科学界に示すことにあったといわれており、チームのメンバーも、高額な給与と名声のために働いていた。

 結果、彼は2度の有人飛行失敗後、世間からの厳しい批判と名誉失墜により、研究を断念することとなった。

 一方のライト兄弟は、大学も出ていなければ、政府からの資金援助など1ドルも受けていなかった。彼らは自転車屋を営みながら飛行機の開発に励んでおり、チームメンバーも少人数。ラングレーと比べれば、決して恵まれた環境で研究をしていたわけではなかった。