「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」
では対応できなくなっている

 団塊の世代がすべて75歳以上となった「2025年問題」がすでに過去となった今、それに代わる社会問題を語るキーワードになったのが「2040年問題」だ。

 2040年になると、1970年代前半生まれの団塊ジュニアたちが65歳以上となり、高齢者人口が約3900万人とピークに達する。高齢化率は約35%となる一方で、15~64歳までの労働力人口は6200万人前後(約55%)に急減することが予測されている〔国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(令和5年推計)』より〕。

 こうした人口構造の変化によって社会保障や就労など、さまざまな社会問題が起こることが懸念されているのだ。

 戦後、経済が急成長する中で発展した日本の社会保障制度は、「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」という構造でスタートした。労働者人口が多く、経済成長が続いている間は財源の不安もなかったが、少子高齢化が進み、雇用環境が大きく変容した社会では、現役世代だけに負担を頼る制度では対応できなくなってきている。

 そのため、政府は給付、負担の両面で世代間、世代内の公平が担保された「全世代型の社会保障」への転換を進めており、かつては一律に優遇されていた高齢者にも、経済的な負担能力に応じた保険料や医療費の自己負担分の支払いを求めるようになってきている。それは、高額療養費も例外ではない。

 高額療養費は、高額な医薬品を使用したり高度な治療を受けたりして、医療費が高額になっても、患者が支払う自己負担分に上限を設けることで、患者の負担を抑えるために設けられた制度だ。

 医療費が一定額までは通常通りに、年齢や所得に応じた自己負担割合(1~3割)を支払うが、その上限を超えた部分の医療費については負担が軽減される。

 この制度のおかげで、医療費自体が1000万円、2000万円と高額になっても、それに比例して患者の負担も際限なく増えていくということにはならない。患者が支払うのは所得に応じた自己負担限度額の範囲内に抑えられるので、貧富の差に関係なく必要な医療を受けることができる。公平、平等な日本の医療制度を象徴する重要な給付だ。