通院の自己負担額が
年間で最大7万2000円の負担増も

 年間上限は据え置かれるが、年収約200万~370万円の人の通院の自己負担額は、今よりも年間で最大で7万2000円の負担増になる。

 前述のとおり、外来特例は通院の医療費の自己負担額を軽減するものだ。その限度額が引き上げられるということは、日常的に支払う医療費の自己負担額がじわじわと増えていく可能性がある。

 高齢になると、若い世代に比べると医療機関を受診する確率は高くなり、医療費も日常的な支出となっている。生活必需品の物価上昇が続く中で、医療費の自己負担が引き上げられると、家計への影響は免れないだろう。収入が公的年金だけの人や手持ち資金が心細い人は、一段と引き締めが必要になりそうだ。

 今回の制度改正では、70歳以上の人の外来特例は継続されることになったが、健康保険組合の代表や経済界など保険料を負担する側からは廃止を求める声も上がっている。

 確かに、外来特例は制度改正の経過措置として創設されたもので、導入から20年以上が経過している。だが、収入が国民年金だけの低年金者などにとってはセーフティネットともいえる制度になっており、必要だからこそ続いてきたという側面もある。

 今後も国民皆保険制度を持続していくために、医療費の適正化は避けては通れない関門だろう。だが、低所得層にとって自己負担額の引き上げは死活問題だ。体調が悪いのに受診を控えたことで、病気の発見が遅れて手遅れになるケースが増加する恐れもある。

 昨年度の高額療養費の引き上げ問題にも見られたが、このところの医療政策は、あらかじめ決められた社会保障予算の削減の数字合わせをするために、機械的に患者負担に転嫁する印象が強くなっている。だが、そうした機械的につくられた数字の裏には、実際に生活している人々がいて、医療を受けている患者がいる。

 公的医療保険は、この国で暮らす人々が医療費の負担によって貧困に陥らないようにする防貧機能を期待して創設されたものだ。その制度が新たな貧困を作り出すことは、絶対にあってはならないはずだ。医療費の自己負担額の引き上げは、市民生活の実態を丁寧に調査した上で、慎重に判断していく必要がある。