近氏は豊田会長の秘書を務めた、側近中の側近

 世界の自動車産業に与える、近年の中国の急速な電動車シフトのインパクトは大きい。中国政府は、セパレーターなどの部材、リチウムイオン系のバッテリー、そしてEVやプラグ・イン・ハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車の大量生産体制を整備してきた。

 BYDは2025年、米テスラを上回り世界トップのEVメーカーになった。EVで世界3位も中国の浙江吉利(ジーリー)。4位は米GM、5位は独フォルクスワーゲン、6位は中国の長安汽車だった。

 トヨタのEVシェアは、IT分野から参入した中国の小米(シャオミ)を下回り、世界11位だった。中国勢はアジア新興国地域、そして欧州でもEV販売を伸ばした。

 中国EVの競争力は、低価格にある。トランプ政権がEV販売補助金を停止したこともあり、欧米の自動車大手の業績は総崩れの様相だ。米国では、GM、フォード、ステランティス(クライスラー)がEV関連で約8兆円もの損失を出した。フォルクスワーゲンやベンツの業況も厳しい。

 また、車載用ソフトウエア開発競争も激化している。自動運転や、車内エンタメなど、SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)開発が急務となっている。AI(人工知能)分野における中国企業の急成長を考えると、EVなど電動車とSDV開発の両面で、中国勢は100年に1度の自動車業界の変革を主導するとの見方もある。

 このように変革が加速する中、トヨタは健闘しているといえるだろう。エンジン車から電動車までフルラインナップ(全方位型戦略)を取る。トヨタは北米市場でHV需要を開拓し取り込んできた。HVは中国でも販売は微増しており堅調だ。

 ただ、過去の実績が将来の競争優位性を保証するわけではない。むしろ、過去の成功体験が、変化への適応を難しくするケースが多い。トヨタはこれまで以上に、コストカットや設備投資、ソフトウエア開発などの意思決定を迅速化する必要がある。

 特にSDV開発においては、非自動車企業とのアライアンスの重要性が高まる。こうしたことから、豊田章男会長の秘書を務めた、側近中の側近である近氏を新社長に就けたとみられる。