まずレアアース問題で佐藤氏は力を発揮できるか

 社長を3年務めた佐藤氏は、副会長に就任する。佐藤氏はトヨタの経営と、自工会など業界団体の重責を担っており、社内からも佐藤氏の職責が重過ぎるとの指摘があったそうだ。

 今後、佐藤氏は自動車開発のプロとしての専門性を発揮し、わが国の自動車業界の体制整備を担うことになる。今回の社長交代には、トヨタの意思決定と、政府や業界団体との利害調整を分ける狙いもあっただろう。それほど、自動車業界がわが国経済に与える影響は高まっている。

 目下、電動化やSDV開発に対応するため、希土類(レアアース)の調達網の構築が急務である。現状、希土類の中国依存の引き下げ、新たな調達網の確立を個社で短期間に対応することは難しい。業界全体や経済全体での対応が求められる。かつて米中対立で、車載用半導体の供給が大混乱に陥った時もあった。そうしたリスク対応も待ったなしだ。

 自動車は日本の最重要産業でありトヨタはナンバーワン企業である。今回のトップ人事は、社内の意思決定と、産業界のリーダーとしての役割を近氏と佐藤氏に分担させたといえる。佐藤氏は経団連副会長や自工会会長として、業界の合従連衡をも支援することになるだろう。

 例えば、米国市場における日産自動車とホンダの連携が遅れていると報じられている。協業体制の確立に、自工会の支援も必要になるかもしれない。また、トヨタが経団連会員のIT企業と連携し、海外のIT、AI企業と国内企業の協業体制を整備する可能性も高い。

 トヨタは次世代のEVやSDV、さらには半導体分野でも世界トップのスピードと規模でのリーダーシップを発揮するだろう。これまで以上に、トヨタの事業戦略が日本経済の回復に大きなインパクトを与えることになりそうだ。

真壁昭夫さんのプロフィール