ですから、普通に食べている中で繊細な味がわからないとか、ひけ目を感じる必要は全く無いと思います。

「美味しい」と感じる時に
味が占める割合は一部に過ぎない

 ある調査によると、人が「美味しい」と感じる時に味だけが占める割合は30~40%程度だそうです。確かにそれ以外の要素が山のようにありますよね。

 見た目や匂いはもちろん、サービス、設え、お皿、合わせるお酒、場所、一緒の相手、BGM、居合わせた別の客の所作、自分の体調だってそうです。

 おいしいって、すごく寒い日に、女将が薦めてくれた湯豆腐の味が忘れられないとか、料理単体ではなく体験に紐づく場合が多いですよね。それにもし味だけを真剣に比較するなら、同じ条件で食べ比べをしない限りはわからないし、評価はできません。

 ですから「味」のみを真剣に考えるのではなく、食事全体を楽しみましょう。

 そしてもし感想をSNSで書いたり、誰かに伝えたりするなら、何を食べたという羅列を主にするのではなく、体験と絡めて自分なりのおいしさの表現方法を見つけたほうがいいと思います。視点を皿の上から、レストラン全体にするだけで、驚くほど表現の方法は広がります。

 私もお店紹介の文章を書いたりしますが、実はほとんど味には触れません。思い返して、いったい自分はどこに魅かれたんだろうということを、大きな枠で考え、それからポイントを絞ります。そしてできるだけ自分なりの表現でその良さを伝えようと考えます。

 どうしたら「美味しい!」とか「絶品です」といった言葉を使わずに表現できるか。常套句は簡単なのですが、思考停止とイコールだったりしますし、なにより読む人が興味を持ってくれないですから。

 そこをひたすら考えるのは、脳のトレーニングとしても有効です。

「日本人は味の冒険をしない」
分かりやすい味だけが正解なのか

 そもそも現代では、とんでもなくまずい店はほとんどないですよね。昔はありましたが、今は調理器具や流通の発達、ウェブによる情報の共有などで味のレベルが一定以上に保たれています。そうではない店は淘汰されてしまいます。