確かにお店は心の止まり木かもしれませんが、人生相談のボランティアではありません。他のお客さんの料理もあるし、接客もしたい。ラストオーダーを過ぎたら店じまいの準備もしたいのです。
安易なアドバイスも考えものです。私も大学生の頃、近所に入り浸っていたカフェがありました。ある時、年上のマスターが「もう少し売り上げを伸ばしたいんだよね」と言ったので、いろいろとアイデアを出してしまったんです。やれスープがいいですよとか、こんなケーキがあれば、とか。
そしてふと、マスターが不機嫌になっていることに気づきました。もちろん、そんなレベルのことはわかっているわけで、素人が口を出すべきではなかったのです。よく他のお店の悪口を言うのは厳禁といいますが、こういったお店への提言も慎重になったほうがいいと思います。
常連というのはどこかでお店から特別扱いを受ける存在です。上手なお店は、一見さんにわからないように、さらりといい部位を出したりします。ですから余計、謙虚になって気持ちの良い雰囲気を作ること、きれいな客になることは大事ではないでしょうか。
そして、初めてのお店でご自身と常連の扱いが違うからといって、過度に反発したりはしないようにしましょう。
できれば常連店を4つほど持ち
時には手みやげを渡してみよう
大切にしたいお店なら、時々手みやげを持っていくというのはいいかもしれません。周年のお祝いといった特別な時でなくても、少し無理を聞いてもらったり、それこそコロナのようなことがあった時、さりげなく渡すと喜ばれると思います。
『50歳からの美食入門』(大木淳夫、中央公論新社)
ちなみに手みやげには実は鉄則があります。“和食店なら洋菓子を、洋食店なら和菓子を”です。同じジャンルのものって食べ飽きていたりします。魚屋さんは焼肉が大好きですし。あとはすぐに食べないかもしれないなら、できるだけ個包装のものを選ぶことも大事です。ちなみにもし常連店のお弟子さんが独立するなら、そのお店で提供しそうな美味しいお酒をプレゼントすると喜ばれます。
常連になりやすい店としては、シェフとの年齢差が前後10歳以内がいいでしょう。それくらいだと落ち着くし、共通の話題もあります。
一方で若いけれど応援したくなるシェフやサービス人もいたりしませんか。そういう若者の店に行くと、こちらまで元気になりますよね。"オヤジ殺し"系だったり、とにかく情熱がほとばしって真摯だったり。親になったような気持ちで、そういう若者を温かい目で見たり、誰かを連れて行って売り上げに貢献するといった行為も、大人のたしなみかもしれません。
第一章でも書きましたが、常連店がジャンル・値段別で4店くらいあれば最高だと思います。一度通い詰めると、さまざまな理由で行かなくなっても、なんだか故郷のような気になるんですよね。あのシェフは元気だろうかとふと思ったり、近所を通った時にちょっと寄って再会を喜ぶ感じも格別です。







