株価時価総額上昇の果実は
外国人投資家に
アンケート調査によれば、多くの上場企業は安定株主5割を確保しており、この5割は株式持合など企業や金融機関の保有分を指していると考えられます。安定株主を確保すると、経営者はそれ以上の自社の株式保有構造の興味を持ちません(商事法務研究会『旬刊商事法務』の各年の株主総会白書参照、この数値はシンクタンク等が発表する持ち合い株式比率を大きく上回っています)。
しかし安定株主は文字どおり株式を売買せず保有したままなので、日本の株式市場は外国人(保有比率3割)と家計(2割弱)の二者のみが売買をするいびつな市場となっています。年間GDPに匹敵する500兆円もの株価時価総額上昇の果実は売買高7割を占める外国人投資家にいってしまいました。
このような安定株主を巡るアンケートが存在すること自体が、標準的なファイナンスを学んだ人にとって奇異に感じられるかもしれません。しかし我が国では資本自由化を怖れた企業が安定株主工作を行うことは必要悪と思われてきた経緯があります(奥村宏(1991)『法人資本主義』朝日文庫,p.124)。
故奥村宏氏は1980年代、90年代を通して、企業集団や株式持ち合いなどの日本企業の諸慣行を厳しく批判した研究者でしたが、当時のバブル的雰囲気では弊害がマクロ経済に顕在化することはありませんでした。
しかし外国人株主のみならず家計株主にも閉じた企業は余剰資金を運用して、地価株価バブルを起こす一方、アベノミクス期の株価上昇期には国民窮乏化を招きます。
企業の持合株を家計が
買えば丸くおさまる?
この家計の株式保有過少の問題は日本経済の停滞問題を深刻にしています。企業が利益を上げたとき、家計が株主となっておれば、概ね生産の果実を「労働者」として受け取るか「株主」として受け取るか、の問題にすぎないといえます。しかし日本の家計は株主ではないのだから、果実は外部に流出してしまっています。
そのため株主構成をそのままにしておいて、企業ガバナンスの強化は時期尚早といってよいでしょう。







