東日本大震災後のチャリティーマッチ
ゴールと「カズダンス」に感動の涙

 懇談の席で福島に加入したカズへあらためて感謝の思いを伝えた内堀知事は、いまも県民とカズを強く結びつける絆に言及した。それは2011年3月29日に大阪・ヤンマースタジアム長居で行われた「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ」でカズが決めた伝説のゴールとなる。

 東日本大震災の発生から2週間あまりしかたっていなかった中で、時期尚早との声を承知のうえで日本サッカー協会とJリーグが開催を決定。国際Aマッチではないのに本田圭佑ら当時の日本代表選手たちが所属クラブを説得して続々と帰国および参戦し、日本国内でプレーする選手たちも大阪に集った。

 対戦カードは「日本代表-Jリーグ選抜TEAM AS ONE」と銘打たれ、スタンドは4万613人で埋まった。そして遠藤保仁、岡崎慎司のゴールで日本代表が2点をリードして迎えた後半37分だった。

 GK川口能活が放ったロングキックを、前線に攻めあがっていたDF田中マルクス闘莉王が相手と競り合いながら頭で相手のペナルティーエリア方向へ落とす。次の瞬間、あうんの呼吸で闘莉王を追い越し、ボールを収めたのはカズ。このチームでも「11番」を背負う男が一気に日本代表ゴールに迫る。

 ゴールさせてなるものかと、前へ飛び出してくるGK東口順昭の動きを冷静に見極めたカズが、ショートバウンドするボールをすくい上げるように右足でとらえる。緩やかで、なおかつ美しいカーブ回転の軌道を描いた一撃は東口の頭上を越えて、無人のゴールへゆっくりと吸い込まれていった。

 スタジアムを揺るがした大歓声に、次の瞬間、感動の涙が加わった。腰をくねらせ、軽やかにステップを踏みながら左手を股間にあてながら、最後は右手の人さし指を夜空に突き上げる。十八番のゴールパフォーマンス、カズダンスと試合後のヒーローインタビューが復興への勇気を与えた。

「サッカー関係者全員で力を合わせたチャリティーマッチだったと思う。ファン・サポーターも含めて、これが東北のみなさんに届くといいし、きっと届いたと思います。まだ苦しい生活が続くと思うけど、みんながついている。日本全体、世界のみんなでこの危機を乗り越えましょう。頑張りましょう」