「カズさんは言うまでもなく、日本サッカーの象徴であり、いまも挑戦すること、継続することに加えて夢を語り、追い続ける価値を背中で示し続けている存在です。個人としては同じ静岡県出身でより親近感がありましたし、日本サッカーの未来を作っている方だと思ってその背中を追っていました」

 カズへの憧憬の思いを語る小山CEOは、大学卒業後にIT業界へ転身。さらに現在J2の藤枝MYFCを皮切りにクラブ経営に携わる立場になってからは、心境に大きな変化が生じてきた。

「僕が経営に携わったチームでカズさんにプレーしてほしいと思ってきましたし、実際におこしやす京都AC(関西サッカーリーグ2部)というクラブにいた3年前にはオファーを出させていただきました」

挑戦を続けてきたカズの姿が
困難の中歩んできた福島と重なる

 実際にカズとの交渉の席にも着いた3年前は合意には至らなかった。しかし、川崎フロンターレ出身の寺田監督のもと、福島がJ3で屈指の攻撃力を誇るチームへと成長を遂げ、J2への昇格をうかがえるベースが整ったと判断した今シーズンを前に、満を持して再びカズへオファーを出した。

 念願の共闘を果たした小山CEOの脳裏には、内堀知事に通じる思いが浮かんでいる。

「福島は東日本大震災や原発事故など多くの困難を経験してきましたが、それでも前を向き、立ち上がり、歩みを止めなかった地域です。その姿は挑戦を続けてきたカズさんの歩みとどこか重なっていると私たちは感じています。

 何よりもすでに福島の人々が『カズさん来てくれる』ととても喜んでくれているし、数多くの声が届いている。福島ユナイテッドを通じて、ピッチの内外でホームタウンをはじめとする地域のみなさまに与える影響の大きさは計り知れないし、夢と希望になってくれると確信しています」

 福島との契約は秋春制へのシーズン移行に伴い、特別に開催されている百年構想リーグ終了後の6月末までの半年間。もっとも、これは期限付き移籍契約の上限が1年間となっているため、ワールドカップ北中米大会後の8月に開幕する2026-27シーズン前に区切りをつける必要があったためだ。

 福島の地元紙が2月中旬に、カズとの期限付き移籍契約が延長される方向で調整に入っていると報じた。福島の小山CEOも表敬訪問後に「横浜FCさんありきのお話なので、そこは明確にお伝えできないところがあります」と言葉を濁しながらも、契約延長交渉の件に関しては否定しなかった。

 延長されるとすれば2027年6月末までの1年間と見られ、その場合は還暦を迎えてのピッチに立つ姿が現実味を帯びてくる。もちろんカズ自身は目の前の一日に全力を注ぐ姿勢を貫いていく。

「試合に出て、活躍して、そして勝ちたい。自分自身に期待したいと思いますけど、そのためには毎日いいトレーニングをして、いい準備をしていく。そうしないと試合には出られないので」

 誰よりもカズ自身が特別扱いを望んでいない。管理栄養士がバランスを考えながらメニューを考案し、調理師が作る食事をバランスよく食べ、自分の体とさまざまな会話を重ねながら、2月7日のヴァンフォーレ甲府との開幕節を最後に遠ざかっている百年構想リーグへの復帰をまずは目指していく。