テキストを読み込み、動画講座も視聴した。なのに、いざ仕事の現場で使おうとするとまるで歯が立たない――そんな「勉強したのに使えない」問題に悩んでいる人は多いのではないだろうか。『ULTRA LEARNING 超・自習法――どんなスキルでも最速で習得できる9つのメソッド』は、MITの4年分のカリキュラムを1年で独学した著者が、学びを「使える力」に変えるための学習メソッドを体系化した一冊である。本連載では、ウォール・ストリート・ジャーナル・ベストセラーにもなった本書の「学習メソッド」を紹介していく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

勉強をしている男性Photo: Adobe Stock

「机の上の勉強」では使えない

 真面目に取り組んでいるのに、いざ仕事で使おうとすると思うようにいかない――そんな経験をしたことはないだろうか。

 本書はその原因を、「直接性」の欠如に求める。直接性とは、学んだスキルを実際に使う場面と、学びの場面をできるだけ一致させるという考え方だ。

 教科書を読んだ知識は、実際の現場にうまく「転移」しないことが多い。つまり、どれだけ勉強しても「使える力」にならないのだ。

 本書には、この「直接性」を実現するために、ウルトラ・ラーナーたち(=卓越した独学者たち)が採用している学び方が紹介されている。今回取り上げるのは、そのなかの1つ、「没入型学習」である。

 まるでプールに飛び込むように、学びたいスキルが「必要とされる環境」に自分ごと飛び込んでしまう――という、少々荒っぽくも効果的な方法だ。

「飛び込む」から身につく

 没入型学習とはどういうものか。著者の定義は明快だ。

没入とは、学ぶスキルを活用しようとしている環境に、自分自身を飛び込ませることを指す。そうすることで、通常よりもはるかに多くの練習が必要になる。またスキルを活用する環境に、より広い範囲で触れることができるという利点もある。(『ULTRA LEARNING 超・自習法』より)

 つまり「使わざるを得ない状況」に自分を追い込むことで、練習量が自動的に増え、しかもバリエーション豊かな経験を積めるというわけだ。

 準備万端になるのを待っていては、いつまでたっても始められない。だからこそ、先に飛び込んでしまうわけだ。

 たとえば、英語を学ぶとき、「文法書を全部終わらせてから会話に挑戦しよう」と考える人は多い。

 だが著者の考えに従えば、たどたどしくてもいいから英語が飛び交う環境に身を置くほうが、結果的にはるかに多くのことを学べるということになる。

語学だけではない没入の力

 没入型学習というと、外国に行って言語を覚えるというイメージが強いかもしれない。実際、著者も言語学習を典型例として挙げている。

言語の学習は、没入が機能する典型的な例だ。学びたい言語がある程度話されている環境に身を置くことで、その言語をそれまでよりもはるかに多く練習することが保証される(そうする他なくなるため)。さらにそれだけでなく、新しい単語やフレーズを学習することが求められる、より多様な状況に直面することになる。(『ULTRA LEARNING 超・自習法』より)

 しかし著者が強調するのは、没入が使えるのは語学だけではないという点だ。

 本書では、積極的に学習に取り組む人々のコミュニティに参加することが、没入と同様の効果をもたらす可能性があると述べられている。

 たとえばプログラミングを学び始めた人が、いきなりオープンソース・プロジェクトに参加してみるとどうなるか。自分には難しいコーディング上の課題に直面し、それを乗り越えるなかで実力がつく。

「教科書を終えてから実践」するのではなく、「実践のなかで教科書の意味がわかる」という順番が、没入型学習の核心なのだ。

「没入」を日常に組み込むには

 とはいえ、誰もがすぐに海外に飛び立てるわけではないし、いきなり上級者コミュニティに飛び込む勇気が出ない人もいるだろう。現実的には、日常のなかで「擬似的な没入」をつくる工夫が効果的だろう。

 たとえば英語なら、スマートフォンの表示言語を英語に変えるだけでも立派な没入だ。Excelを学びたいなら、自分の家計簿を実際にExcelで管理してみる。マーケティングを身につけたいなら、自分のSNSアカウントを「練習台」にして運用してみる。

 ポイントは、「学ぶ」と「使う」を分離させないことである。

 学習とは本来「快適な場所で座って知識を吸収する行為」ではなく、「少し居心地が悪い場所で、必要に迫られながら手を動かす行為」に近いのだろう。その居心地の悪さを自分からつくりに行くのが、没入型学習の本質である。

 スキルを身につけたいなら、まずは教科書を閉じて、飛び込む先を探してみてほしい。不完全な自分のまま、実践の海に飛び込んでしまうこと。

 それが、本書が教えてくれるもっとも力強い学習戦略の1つである。