図2は、1989~2013年の「賃金構造基本統計調査」の実質賃金率(物価変動の影響を取り除いた賃金率)の格差の推移を、1989年の数値を100に基準化した上で、男女別に見たものである。
特筆すべきは、図2の右側の図において、女性の賃金率の下半分の格差(50-10 Gap)縮小と、上半分の格差(90-50 Gap)拡大という現象が同時に観察され、その結果、下半分と上半分の逆方向への格差が相殺し合い、女性の全体の格差には大きな変化は見られないということである。一方で、男性においてすべての格差の指標は上昇しており、女性と非常に対照的である。したがって、女性における顕著なパート雇用者の供給増加の効果は、賃金率の格差全体に影響する、女性特有の現象と言える。
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およそ四半世紀の間に
男性の賃金格差は拡大の一途
先ほどの筆者らによる共同研究によると、男性では、ほぼすべての労働者の潜在経験年数のリターンが低下したことが、賃金率を下げる方向に作用した。これは年功序列に象徴される日本型雇用慣行の崩壊や、一般訓練(他の企業においても利用可能なスキルを得るための職業訓練)のリターンの低下などの影響を示唆している。
一方で、高賃金層では、勤続年数のリターンが上昇している。経済学では、労働者が訓練や教育により身につけた知識や技能を「人的資本」と呼び、それを引き上げるために訓練や教育を行うことを「人的資本投資」と呼ぶ。つまり高賃金層の勤続年数のリターンが上昇しているのは、各企業特有の知識や技能(企業特殊的な人的資本)に対して企業が行う職業訓練などの人的資本投資のリターンが上昇していることを表している。







