イスラエルに拠点を置く理由

――昨年、イスラエルにロバーツ・ミタニの事務所を開設されました。イスラエルに拠点を置かれる理由は?

 我々が取り扱っているイノベーションの源泉は、アメリカとイスラエルが半々くらいです。この二つで圧倒的な部分を占めます。またアメリカのユダヤ人と、イスラエルのユダヤ人は非常に密接に働いていますから、イスラエル人と在米ユダヤ人を合わせると、イノベーションの過半がここから出てきます。

 インテルはイスラエルで政府に次ぐ第二の雇用者です。ですから「シリコンバレーでインテルが開発した」と見える技術でも、実はイスラエル発だったというようなものはたくさんあるのです。

 彼らは日本企業とも交流を進めたいと望んでいます。しかし東京からは直行便もないのが現状です。中国や韓国の人が極めて積極的にイスラエルの技術に接近しているのに比べ、日本は極めて消極的です。イスラエルは多くの国と技術交流協定を結んでいます。主な国で協定がないのは日本くらいです。

 イスラエル自体は市場が小さいので、彼らは数や量を競うことでアメリカ、日本、中国と競えるとは考えていません。ですから、質で勝負したいのです。知恵を産みだせば、それはどこにでも運んで行くことができます。それは日本が今後、量ではなく質で競っていかなければならない時にどうすべきかという将来の指針ともなります。イスラエルの技術と、日本企業の商品化力、日本を中心とする大きな市場へのアクセスを組みあわせれば、画期的な技術の商品化の可能性は著しく高まります。

 イスラエルは水が少ないのでこの問題を克服するために水道事業に関する技術革新を進め、7割をリサイクルするようにしました。これを見習うならば、例えば日本の電力不足については、原子力安全神話の再構築を目指すのではなく、一挙に「30年以内に水素社会に移行する」と目標を立て、その技術開発に没頭するほうが、よっぽど賢明だと思うのです。