資源に乏しい日本がイノベーションを起こすべき分野の一つは、原発依存に代わる「水素社会への移行」ではないか。新刊『人間復興なくして経済復興なし!』(亜紀書房)に寄せて、楽観できないアメリカ経済と日本に必要なイノベーションについて聞いた。(聞き手・ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

「やりっぱなし」のバーナンキ退場後が怖い米国経済

――アメリカ経済は好調に見えますが、神谷さんは楽観していらっしゃらないようですね?

 アメリカの第1四半期の成長率は1.8%でしたが、私はアメリカの今後の平均成長率はだいたい2%が良いところだと思っています。人口は増加しており、低価格のエネルギーを手にしたことなど、ファンダメンタルズとして2%成長を実現する力はあると思っています。しかし歴史的に、4%台、3%台、2%台と低下してきた傾向を逆に上げるほどの力はないでしょう。アメリカも人口が老齢化する成熟国である点では日本と同じです。

 問題はQE(量的緩和策)からの脱却です。現在起きていることは、「経済指標が良い」というグッド・ニュ-スが、「QEのスピードを下げる」という「バッド・ニュース」になり、株価や債券価格の低下を導きます。QEについても、これを止めるとか、FED(連邦準備制度)が抱え込んだ証券を放出するとか、短期金利を上げるとかの話ではなく、「スピードを緩める」という程度の話で6月に見たような混乱があるのです。

 例えば、米国の長期金利(10年債)が2%以下(インフレ率と同水準)から、2.5%に跳ね上がりました。(極めて短期間に25%調整)。米国債は通常「インフレ率+1.5%」程度にプライシングされますので、通常に戻るとなると3.5%まで戻さなければなりません。これは十分大きな債券ショックをもたらします。これを怖れて、昨今債券ファンド、途上国投資ファンドなどからは、記録的な金額の資金が流出しています。

 連銀の異常な介入による債券価格上昇相場が終焉し、ノーマルに戻る所謂「リプライシング」の周期に入ったかと思われます。今後FEDがどうするのかわかりません。連邦準備制度理事会のバーナンキ議長は「山に登る」ほうだけやり、「山の下り方」は誰も知らないのですが、誰かに託して彼は退場します。典型的な「やってやりっぱなし」。2013年の後半、どのような市場の展開になるのか、怖いものがあります。