「ラーメンから航空機まで」とまでは言いませんが、ネットで入手できないものはないのではないかと思えるほど、オンライン通販は日常に定着しています。その一方、ネット購入では実物を見ることができないので、手元に届いてからトラブルになることも多々あります。身に付けるもの、サイズが各種あるものの場合はネットは使わないという方も多いのでは。
「ザッポスドットコム」は、サイズが重要なものの代表格である靴をメインに扱うオンラインショップ。送料負担だけでなく、返品時の送料も無料という画期的なサービスをはじめ、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)に全神経を集中させた経営方針で、創業10年で全米トップに立ちました。『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』は、ザッポスの若きCEOによる成功の物語です。
10年で年商10億ドルに成長したザッポスの
他社に真似できない3つの競争優位性
2010年12月刊行。著者であり、ザッポス・ドットコムCEOのトニー・シェイ氏の笑顔が印象的なカバー。手に持っている下部のダンボールは実際に配送に使用しているもののデザインをもとにしています。
ザッポス・ドットコムは米国ネバダ州ラスベガスに本社を置き、靴や衣料、アクセサリーなどを販売するオンライン小売会社です。同社のCEO(最高経営責任者)で本書の著者でもあるトニー・シェイはハーバード大学を卒業後、オラクルに入社。同社在職時に共同創業したインターネット広告会社を1999年にマイクロソフトに売却。同年、ザッポス創業に投資家として関与し、徐々に経営にも参画しました。そして2000年にはCEOに就任。わずか10年でほぼゼロから年商10億ドルを達成し、靴のオンライン小売分野で米国最大靴店に成長しました。
原書『Delivering Happiness: A Path to Profits, Passion, and Purpose』は、2010年6月に米国で発売されるや、「ニューヨーク・タイムズ」紙や「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙でたちまち1位にランクされ、ベストセラーになりました。あのアマゾンをも震撼させたサービスは、いったいどのようにして生まれたのでしょうか。
振り返れば、目標を早く達成できた大きな理由は、私たちが時間、資金、経営資源を三つの重要な分野に投入しようと決めたためでした。すなわちカスタマー・サービス(私たちのブランドを作り、クチコミを促進します)、企業文化(コア・バリュー=基本的価値観の形成につながります)、社員の教育と能力開発(後にパイプライン・チームを生み出します)です。
今日でさえ、ブランド、カルチャー、パイプライン(この三つを社内では「BCP」と称しています)だけが、結局自分たちが長期的に持つ競争優位性であると私たちは信じています。
ほかのことは模倣が可能であり、そのうち真似されてしまいます。(230ページ)
成長の原動力となった最大のカギは、リピート客とクチコミです。オンライン企業が普通に使っている広告宣伝費を、カスタマー・サービスとカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)に投入し、顧客のクチコミを通じてマーケティングに結びつけるのがザッポスの戦略であり、哲学なのです。