顧客とのやりとりはコストではなくブランディング!
クチコミを広げリピート率を高める独自の手法

 たとえばザッポスは商品の配送と返品の両方の送料を負担していますが、顧客によってはサイズ・色違いの靴を10足も注文し、必要のないものは返品してきます。配送コスト増加による負担は重いのですが、顧客をハッピーにするマーケティングコストの一環と考えれば、決して重いものではありません。その結果、クチコミはさらに広がります。今では顧客の75%がリピート客で占められているそうです。

 近頃では、「ソーシャル・メディア」や「統合マーケティング」がとても話題になっています。かたや私たちは、魅力的でもなく、ローテクに聞こえるかもしれませんが、電話はブランディングに最適なツールのひとつだと信じています。五分ないしは一〇分の間顧客の注意をこちらに向けさせられると同時に、ここできちんと対応すれば、顧客はこの体験をいつまでも記憶にとどめ、しかも友人たちに話してくれることがわかったのです。(240~241ページ)

zappos.comのトップページ。靴が主力ではありますが、衣料品やバッグも豊富にラインアップされています。
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 私たちには毎日何千もの電話やメールが入りますが、どの電話やメールも最高のカスタマー・サービスと顧客体験を作るザッポスというブランドを構築する機会として考えています。顧客とのどのようなやり取りも、私たちはコストを最小化するという視点ではなく、ブランディングという視点で捉えているため、ザッポスのコール・センターは大多数のコール・センターとは大きく異なる方法で運営されています。(242~243ページ)

 2011年11月、チャリティ講演のために来日したトニー・シェイにインタビューする機会がありました。「ザッポスは自分の天職」と言い切るトニーにその理由を尋ねると、「それは従業員との関係に喜びを見出しているからです。ザッポスの従業員というのは同僚というよりも、むしろ友人。仕事が終わってからも、週末も、いつも一緒にいたいと思える」という答えが返ってきました。さらに彼の報酬について質問を続けると、以下のように断言しました。「私は自分のおカネのためにザッポスを経営しているわけではありません。年収は今でもアマゾンに売却を決めた当時と同じ3万6000ドルです。その他のオプションもまったく付いていません」。