「できない」と開き直る新人に
絶対言ってはいけない「NGワード」

「やったことがないので無理です」という新人に対して、絶対に言ってはいけないのは、「いいからやれ」と「石の上にも三年だ」の2つです。

 自分が若いころ、先輩や上司から同じように言われて、そのとおりにしたことが糧になったという経験を持つ人も多いでしょう。

 しかし現代の新人にこれらの言葉は機能しないどころか、逆効果になることがほとんどです。なぜなら、新人にとって最大の苦痛は「意味のわからないことを延々とやらされること」だからです。

 この職場は非合理だと判断した瞬間に、かれらは心のシャッターを下ろして仕事への関与を心理的に断ってしまいます。

 もう1つNGなのが「自分で考えろ」という突き放し方です。

 これもこちらが思っている以上に新人の不満を募らせることになります。かれらは、悪気なく純粋に「教えることも含めてマネジメントではないのか」と考えているからです。

 実は現代の新入社員たちは、内定や入社前の期間に「自分の頭で考えることが大切」というメッセージをさんざん受け取り、その意識は持っています。

 しかし彼らにとっての「自分で考える」とは、意味を理解し、進め方のイメージが持てたところで、「こうしたほうがいい」と提案することなのです。

 上の世代が「何も教わらなくても自分で考えて行動を始めること」と解釈するのに対し、若手は「まずレールに乗せるところまではやってほしい、そこから先は自分で走る」と考えています。この認識のズレが、世代間のすれ違いを生んでいます。

 以前に比べ、世の中の変化のスピードが加速していることも大きいでしょう。

 昭和時代や平成初期は同じ業務を数年間続けるのは普通のことでしたが、今は半年で業務プロセスが変わることも珍しくありません。

 作業内容への論理的な理解なしには、変化への応用が利かないことは新人もわかっています。説明なしに作業を始められないのは、むしろ合理的な判断とも言えるのです。

急がば回れ!意味と目的を共有する
「伴走型OJT」4つのステップ

 一方で、「急がば回れ」もまた真実です。

 新人世代には一見非効率に見える手順が、仕事の本質やリスク管理を理解するために不可欠なプロセスである場合があります。

 教える側は説明しようとすることで、「なぜ自分はこのやり方をしているのか」を言語化できます。長年の慣習として非合理なまま残っていたやり方を見直す機会にもなります。

 では、新人に対して具体的にどう向き合うべきか。私が提案したいのは「伴走型OJT」とも言える次の4つのステップです。

 1つ目は、仕事の目的を一緒に考えること。

「これは何のための仕事なのか」を一方的に説明するのではなく、「どう思う?」と問いかけながら進めます。上から教え込むのではなく、一緒に考えることで、本人が自分の言葉として仕事の意味を理解できるようになります。

 2つ目は、本人が得られる経験やスキルを、一緒に考えること。

「この仕事を通じて、どんな力が身につくと思う?」と質問をはさみながら、その仕事が本人にとって何の意味を持つかを一緒に言語化していきます。やりがいや成長の見通しが持てると、人の動き方は大きく変わります。

 3つ目は、仕事をスモールステップに分解すること。

 新人には難しく見える仕事でも、細かく分解することで作業のイメージを持てるようになります。分割された作業のひとつひとつは難しくないとわかれば、新人は「なんとかできそう」という感覚を持てるようになります。

 4つ目は、双方向の対話です。

 目的や手順を一方的にインプットするのではなく「なぜだと思う?」「こういうふうに考えてみたらどうだろう」と、常に質問をはさみながら、本人に気づかせていきます。

「あ、こういうことなんですね」という腹に落ちる瞬間を作ることが目標です。本人が自分の頭で考えて納得できれば、そこから先は自走し始めます。

 また、説明をしたあとで、「わからなかったら聞いてね」と突き放すのもNGです。「進んだらまた声をかけて」ではなく、こちらから定期的に「今のところで詰まっていることある?」と積極的に確認しながら伴走することが必要です。

自分で考える力を育てる
「説明コスト」への投資

 こうして手間をかけて説明し、一緒に考え、伴走した先に何が起こるか。

 本人に仕事の意義や目的が見えてくれば、今度は「こうやってみました」「こういう改善案があります」と、自分で考え、創意工夫を重ね、主体的に行動してくれるようになります。類似の業務に対しても自分で仕事の意味づけができるようになり、だんだん説明コストが下がり、独り立ちしていきます。

 これからの理想的なOJTは、知識を植えつけることではありません。上司が育成にはコストがかかることに腹をくくって思考の土台を一緒に作り上げるスタイルです。

 新人への説明コストは、決して無駄な投資ではありません。「新人に教えるのは面倒」ではなく「説明コストを払うことで新人が自立し、自分の将来の負担は減る」と捉え直してみてください。

 若手から「やったことがないので無理です」と言われたときは、突き放したりせず、時間と労力を彼らに費やしてあげてください。

「やったことがないので無理です」と開き直る新人に言ってはいけない「絶対NGワード」

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