スーパーカブの基本構成は、登場時から70年間まったく変わっていない

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):初代スーパーカブが登場してから70年近く。細かい変更はあるのでしょうが、パッと見はほとんど変わっていませんね。

本田技研工業 二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪・パワープロダクツ開発生産統括部 ものづくり企画・開発部 運営マネジメント課 主幹 八木 崇さん(以下、八):乗る人に対してどういう風にフレームを走らせて、どういう風にエンジンを置いて、どこにタンクを置いて……と。これらの構成はオリジナルから変わっていません。これはやはり最初に決めたことが正しかったからだと思います。自分の会社のことですが、本当にすごいと思います。

スーパーカブは、乗る人、燃料タンク、エンジンなど重量物を車体中心にほぼ縦一列に配置している車体パッケージのが特徴。これにより、軽快に車体を取り回せる(ホンダ提供資料を元に、編集部で作成)スーパーカブは、乗る人、燃料タンク、エンジンなど重量物を車体中心にほぼ縦一列に配置している車体パッケージが特徴。これにより、軽快に車体を取り回せる(ホンダ提供資料を元に、編集部で作成)
スーパーカブの基本的な構成は70年間変わっていないスーパーカブの基本的な構成は70年間変わっていない Photo by A.T.

「誰も超えられない」~ホンダの歴代社長が次々と敗れたカブの壁

F:大きくガラッと変えちゃおう、という話は、過去に一度も出なかったのですか?

本田技研工業 広報・久米さん(以下、久):出ました。というか、歴代の社長は実はほとんどみんな言ってるんですよ。「俺の代でカブを変えてやる」って。もっと進化させたいし、できればもっと儲かるようにもしたい。でも、あのボディパッケージングを誰も超えられない。変えられない。

 例えば昔の吉野(浩行)社長や福井(威夫)社長は、新聞記者のインタビューで「カブを新しくするぞ」と明言しているんです。でも二人とも変えられなかった。そして最後の最後に「できなかった」と言って、爽やかに退陣されました。

 結局、誰も超えられないんですよ。(乗る人の)性別を選ばない、スキルも選ばないのがカブです。それほど完成度が高いということです。

F:歴代社長はみんな変えたかった。そりゃそうですよね。みんな自分の代で大変革を起こしたい。うまく変えることができたら、「カブを変えた男」として間違いなくホンダ史に名を残すことになる。でも変えられない。良いですね。いいお話です。