アメリカの同盟国で
分かれる2つの対応

「トランプ政権の不確実性が高まるなかで、私たちはどう振る舞うべきか」という問いが、世界中で、特にアメリカの同盟国のあいだで真剣に論じられている。

 この問いに対して、いま先進諸国のあいだで2つの答えが示されている。

 ひとつは、アメリカ依存を相対化し、中堅国どうしの連携で新たな秩序を築こうとするカナダのマーク・カーニー首相の路線である。カーニー首相は今年1月のダボス会議で、世界秩序の「断絶」を語り、中堅国による連携の必要性を訴えた。

 これはトランプ政権の相互関税や同盟国軽視に翻弄される国々の不満をすくい上げるメッセージであり、実際に広い反響を呼んだ。さらに3月には、カナダが北欧5カ国との軍事調達協力を深める方向で動いているとも報じられた。

 もうひとつは、アメリカが不安定であっても、なお米国を軸に自国の戦略的位置を高めようとする日本の高市早苗首相の路線である。

 この点を理解するうえで、米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』に掲載されたマイケル・J・グリーンの論考はきわめて示唆的だ。3月16日付の「How Takaichi Can Triumph」で、グリーン氏はカナダのカーニー路線よりも、高市首相の対米路線のほうが現実的だと明確に論じた。

 高市首相は、中国こそが最大の脅威であり、トランプ大統領がいかに気まぐれに振る舞おうと、アメリカとの安全保障協力を強化する戦略をとると明言してきた。グリーン氏は、まさにこの二つの路線を対比し、高市路線に軍配を上げている。

日本は経済安全保障において
「同盟国」から「共同経営者」に

 グリーン氏は、カーニー構想が対米疲弊した国々には魅力的に映ること自体は認めている。だがそれは、中堅国が実際に使える持続的な大戦略にはなり得ないと指摘する。なぜなら、中堅国どうしがどれだけ結束しても、米軍の抑止力、情報力、兵站能力、核の傘の代替は簡単にはつくれないからである。

 とくに日本、オーストラリア、フィリピン、韓国のように、中国の軍事的圧力に日常的にさらされている国々にとって、「脱アメリカ」は理念としては語れても、現実的な安全保障戦略にはならないというのが、グリーン氏の基本認識である。