発達障害の代表的なものに「限局性学習症/学習障害(LD)」「注意欠如多動症(ADHD)」「自閉スペクトラム症(ASD)」の3つがあります。
強迫症は「自閉スペクトラム症」と誤診されることがよくあります。こだわりや行動の反復が両者に共通して生じることが一因です。
私のクリニックに転医してきた患者さんでも、知能検査(IQ)でのばらつきを理由に発達障害と診断されていることがよくあります。これは誤りです。得手不得手は誰にでもあることです。
そもそも、知能検査の専門家が、検査結果だけで診断をつけてはならないとくり返し警告しています。
こだわりの変化や視線の動きで
両者を判別できる
ここで発達障害と強迫症の違いを見極める方法をお伝えしましょう。
1.こだわりの対象が変化する
発達障害と診断するためには、幼い頃から症状が一貫している必要があります。強迫症の場合、幼い頃からこだわりやすい傾向を持っていたとしても、こだわりの対象はライフステージに応じて変わることが多いです。小学校に入ってから、字の書き方や他人の評価を気にしだしたのなら、発達障害よりも強迫症のほうが強く疑われます。
2.共同注視があるかどうか
自閉スペクトラム症の診断に欠かせないのが共同注視の欠如です。共同注視とは、他人が左を向くと同じように左を向いて、視線のその先に何があるのかを見ようとすることです。赤ちゃんは養育者が見た方向を一緒に見て関心を向けます。共同注視は、他人の意図をくみとる能力の土台となります。
もし赤ちゃんのときからこの共同注視がなく、養育者と視線を合わせようともせず、「あっちだよ」と指を指したときに示した方向を見るのではなく、その指を見ているのだとしたら、自閉スペクトラム症を疑います。
また、自閉スペクトラム症の人は、他人が何に注意を向けているかといった心の中で生じていることよりも、いま見えているものの色や形、パターン化した動きに注目する傾向があります。大人になってからも、対人場面で視線を回避することがよくあります。
ちなみに社交不安傾向のある人も視線回避がありますが、彼らの場合は他人の考えや評価を気にしており、この点では自閉スペクトラム症とは対照的です。
3.完璧にやろうとして遅くなる
強迫症を持つ人は、仕事に就いた直後はほかの人に比べて仕事を覚えるのが早いのですが、同じことを何度もくり返すうちに作業効率が落ちることがあります。作業のミスを怒られている人を見て確認が増えたり、完璧にやろうとしすぎて、仕事や勉強の進捗(しんちょく)が遅くなるためです。
強迫症の不器用さは発達障害と勘違いされることがありますが、仕事や勉強の進め方は強迫症の治療さえすれば改善します。
誤診されたせいで
成長を阻害される悲劇
『強迫症とうまくつきあう』(原井宏明、松浦文香、さくら舎)
本来の発達障害は発達の遅れを意味しますが、強迫症は能力の過剰な発達により問題が生じているといえます。さらにいえば、発達障害の診断がついても問題は解決しません。
発達障害と強迫症は、発達の過程で特性が顕著に表れる点が共通しています。多くの治療者は発達障害を治すのではなく、まわりの人にその特性に合わせた配慮をさせることに比重を置いているのが現状です。
行きすぎた配慮から本人が発達する機会を奪い、成長を障害していることもあります。ほかの子どもと違うというだけで発達障害と診断する精神科医は、不必要な診断によって患者さんの自尊心・向上心を踏みにじっているのではないかと思うこともあります。







