「更新か更生か」――290世帯が出した結論

説明会工法や施工会社の選定、工事スケジュールなど、複数回にわたる住民説明会を開催した 写真提供:シティフロントタワー住宅管理組合

 排水管の修繕には、全ての管を交換して一新する「更新」と、既存の管を生かして内側を洗浄・塗膜する「更生」という大きく2つの工法がある。

 どちらにもメリットとデメリットがあるため、とりわけ3つのポイントに着目して選定に取り組んだ。それが、クオリティー(Q)コスト(C)デリバリー(D、工期)の「QCD」である。

 まず、更新の場合、耐用年数は30年以上。全戸に対して当該壁の解体から内装の復旧まで行うため、費用は内装材の価格も含め6億~10億円。工期は約1年だ。

 一方、更生には多くの方法があり、8社の工法を検討した。すると、おおむね耐用年数は20年。費用は、壁の解体が拠点階3フロアのみとなるため3億円強。工期は約半年との見積りが得られた。

 「更新は更生と比べて費用が約3倍になり、住民の追加負担も大きくなりますが、全排水管を一新できます。優先するのは機能性か実現性か。これは住民投票に委ねることにしました」(山下氏)

 当初は更生の耐久性を不安視する声も上がり、住民の支持は更新と更生で拮抗(きっこう)していた。

 それを受けて、住民説明会や意見交換会、アンケート、結果報告を幾度となく実施し、質問には一つひとつ丁寧に回答して、ファクトを示しながら説明を続けた。特に、QCDという軸を明確にしたことで、各工法への理解が深まり、合意形成を図る上でも有効だった。

 そして、初回の説明会から1年半たった23年、竪管は更生、管径の大きい横主管は更新に決定した。また、更生にも工法が何種類もあるため、マンションの配管との適合性に留意して選定を進め、施工候補会社へのヒアリングや住民説明会を実施した上で、翌24年に施工会社も選定した(次のページのスケジュール参照)。

更生過程「排水管ライニング」工法による排水管の更生過程 写真提供:カンドー