PIXTAマンションの生き残りを懸けていっそう綿密な管理計画が必要に…… (写真はイメージ) Photo:PIXTA

国民の1割以上がマンションに住むといわれる今日、管理委託費や保険料の高騰、修繕計画の見直しや理事会の運営など、管理組合はさまざまな課題に直面している。マンション管理士であり、RJC48(マンション管理組合理事長勉強会)代表としてリアルな情報を発信する應田治彦氏に、理事が抱える悩みや管理組合を主体的に運営する意義などを聞いた。(取材・文/ダイヤモンド・ライフ編集部)

なぜ、中古市場で「修繕計画」が評価されるのか

 私が代表を務める勉強会(RJC48)では、昨今、長期修繕計画が頻繁に議論のテーマに選ばれています。「マンション管理計画認定制度」(*1)や「マンション管理適正評価制度」(次ページの表、*2)の影響が大きいですね。

 両制度とも2022年4月からスタートしたのですが、後者のマンション管理適正評価制度については、1年程度のうちに評価を受けるマンションが1万棟を超えるでしょう。最近、各デベロッパーのフラッグシップ的なマンションでは、この評価制度を受けていないと許されない雰囲気になっています。

 特に大手デベロッパー系の管理会社には、自社の管理するマンションが「五つ星」(次ページの表)であるのは当然だというプライドがあり、他社の管理物件との差別化のために熱心に取り組んでいます。ただし、新築や築浅のマンションが高い評価を受けやすい一方で、築20年以上の既存マンションにはとてもハードルが高い制度になっています。

 高経年マンションにとっては、向こう30年の大規模修繕の資金計画をとんでもない額に上げないと認定・評価基準がクリアできないからです。本来、マンションのスラム化防止こそが国の考えていた目的だったわけですから、本当は築20年ぐらいのマンションでも頑張ればクリアできるような制度が望ましいとは思います。

 とはいえ、資金計画も含めたマンションの管理に点数がついて評価を受ける世界が出現したのは画期的だと思いますし、修繕計画そのものに基準ができたということはポジティブに捉えていいと思います。

 実際に、評価制度を受ける過程で長期修繕計画を見直そうという管理組合も増えています。今の資金計画で進めて30年後も大丈夫か、それとも資金ショートするのか、それらを可視化したことは意味があることだと思っています。認定が取れて高い評価を受けられるマンションとそうでないマンションとでは、リセールバリュー(再販時の資産価値)に違いが出てくるという流れになりつつあるのは確かです。

 修繕積立金の資金計画は、管理組合定期総会の資料に必ず記載されています。24年6月に「マンション標準管理規約」が改正され、区分所有者への周知と再販住戸購入予定者などへの修繕積立金変更予定の開示が推奨されていますが、区分所有者以外は閲覧できないマンションもまだまだあります。

 中古マンションの購入者にとっては、長期修繕積立金がどうなっているかは大事な判断材料ですから、見せてくれないマンションには何かあると疑った方がよいでしょう。

 マンション管理は十年一日だといわれていましたが、ほんの10年前までは不動産屋さんに「大規模修繕計画が実現可能か」なんて質問する人はいませんでした。今は結構聞かれるといいますから、相当様変わりしてきています。今後10年で、さらにマンションの“管理の質”が問われてくるのではないでしょうか。

*1 マンション管理計画認定制度(国土交通省)
マンション管理計画が一定の基準を満たす場合に地方公共団体の認定を受けられる制度。マンション管理計画認定制度の認定を受けることで、区分所有者の固定資産税を減額できる「マンション長寿命化促進税制」の管理計画の面での適用条件を満たすことができる。17項目の基準に照らして認定の可否判定を行う。認定は5年間有効。

*2  マンション管理適正評価制度(マンション管理業協会)
マンション管理の状態を30項目の基準を点数化し評価する(100点満点)。さらには、点数に応じた「星」の数(0から5までの6段階)での格付けを行う(次ページの表参照)。評価は1年間有効。2024年12末現在の登録管理組合は6708組合