賃上げムードが一変する可能性も...

 さらに、一般生活者への影響を考えてみよう。まず、ガソリン価格が1リットル当たり190円台に急騰した。日本では慣例的に国際価格を反映して、毎週木曜日に卸売価格が決まる。だからおよそ木曜日を起点に上がったり下がったりしている。

 政府はガソリン補助金を再開し、まず予備費の約4000億円、加えて約8000億円の投入を決めた。これでガソリン価格はいくらか下がるだろう。

 また、政府は戦略的備蓄の原油を放出すると決めた。ただしこれは、IEA加盟国と協調して実施したもので4億バレルにすぎない。世界の原油需要の4日分程度しかないから、どちらかというとパニックを抑える心理的な側面が大きいだろう。

 すでに報じられているように、トヨタ自動車は中東向けモデルを減産する。三菱ケミカルや旭化成、三井化学はエチレンを減産する。製造業にとって減産は収益減に直結するので、今後の業績に悪影響を及ぼすだろう。となると大企業で進んだ賃上げムードが一変する可能性もある。

 また、イラン戦争が長期化すれば、これから数カ月~半年くらいで日用品や食料品が数%~10%ほど値上がりする可能性も指摘されている。

 電気代は、3カ月のコスト実績を平均して2カ月後から反映される。だからちょうどクーラーを使い出す夏前に電気代が上がる可能性がある。補助金などがなければ生活者には痛手だ。

 2026年に入り、春闘で大幅な賃上げや物価上昇がいくぶん鈍化することで、実質賃金はプラス圏への定着が期待されていた。しかしそこに、イラン戦争が降りかかった。

 日本は、石油は官民で約250日分もの備蓄があるが、LNG備蓄は3週間程度しかないと指摘される。さらに、経済活性化のけん引役である訪日観光客(インバウンド)の減少も予想される(航空便の減少などで)。テロを恐れて、海外渡航する人自体が減っても不思議ではない。

 1970年代のようなオイルショックがただちに起きるとは思わない。しかし、イラン戦争が長期化すれば、無傷ではいられない。

 日本も無策ではなく、例えば原油はアフリカルートなど代替策を模索し、ヘリウムの代替ガスの試行や、使用済ヘリウムの回収と再利用を試みている。あるいは使用済の電子部品を都市鉱山から獲得する取り組みもある。ただ、その成果は未知数だ。

 企業人は運を天に任せることはできないが、せめて、もうちょっと予見可能性があればビジネスはやりやすいだろう。トランプ米大統領は、せめてヘリウムとシェールガス、シェールオイルを採算無視で大生産してくれないだろうか。それなら同盟国の経済不安も緩和するだろう。

 一般生活者の立場で、できることはあるだろうか? 思いつくのは節約かデモくらいだ。筆者はとりあえず、明日から髪をセットするスプレーを控えようと思う。私の頭髪の維持より、LPGガスを大切にした方が良さそうだから。

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