「フランス車」C3はセーヌを離れ、スロバキアで生産されている
シトロエンの命運を一身に背負い、欧州車の存続を賭けた「防波堤」として送り出された新型C3だが、その出自を辿ると多国籍企業としての冷徹な合理性が見えてくる。かつてシトロエンのコンパクト車は、パリ近郊のポワシー工場で生産されていた。シムカからスタートし、クライスラー、PSAへとオーナーを変えながら、フランスのモータリゼーションを支えてきた聖地とも呼べる場所だ。だが現在ポワシー工場で生産されるクルマは、ラグジュアリーブランドとしてシトロエンから独立したDSやPSAグループ唯一のドイツブランドであるオペルである。フランス車(であるはずの)C3は、セーヌの河畔を離れ、スロバキアの古都トルナヴァで生産されている。
1976年にプジョーがシトロエンを傘下に収めて誕生した「PSAプジョー・シトロエン」(現・ステランティス)のロゴ。2021年にフィアット・クライスラーと合併し、現在は14ブランドを擁する世界有数の自動車グループとなっている(プレスリリースより)
と、前置きはこの辺にしてクルマに乗り込もう。
今回は遠出ができないので、首都高と湾岸線を一筆書きして様々なシーンを試してみる。
渋滞を避けたいので、家を出たのは午前2時だ。近所迷惑にならぬよう、ドアをそっと開けシートに腰を下ろす。新たにC3にも採用されたアドバンスト・コンフォートシート。セーヌ河畔を追われ、ドナウのほとりで生産されようとも、シトロエンの「核」は1ミリも揺らがない。座った瞬間はフワッと柔らかく心地良い。だが芯がしっかりして腰の収まりが良い。
この快適なシートを生産するのは、フランスが世界に誇るサプライヤー、フォルシア社(現フォルビア)である。かつてはPSAの一部門であった同社は、シトロエンといわば親戚関係にある。興味深いのは、そのフォルシアさえも今やフランス国外に拠点を広げ、多国籍企業として活躍していることだ。
首都高4号新宿線の高井戸のランプを駆け上がり、本線に合流してアクセルを踏み込む。未明の首都高は流れが速い。代々木の急カーブを抜け、三宅坂の分岐を過ぎる。小型で車高が高いのに、クルマは驚くほど安定している。
未明の大黒PAにて Photo by F.Y.







