「欧州のデトロイト」スロバキアで生産
「フランス車は壊れてからが本番」などという笑えない冗談が通用したのは過去の話だ。C3が生産されるスロバキアは、今や人口当たりの自動車生産台数で世界一を誇る「欧州のデトロイト」である。中でもトルナヴァ工場は、ステランティス・グループの中でも最高レベルの品質指標を出している。最新のロボット技術と感情に左右されない厳格な検査プロセス。そこで組み立てられるC3は、かつてポワシー産が持っていた「個体差という名の揺らぎ」を排除し、設計図通りの快適性を均一に提供している。
パワートレインの変遷も時代の波を象徴していよう。
VWのディーゼルゲート事件以降、欧州で吹き荒れた「脱ディーゼル」の嵐に、シトロエンも容赦なくのみ込まれた。ディーゼルの代わりに新型C3のフロントに鎮座するのは、日本仕様の核となる48Vマイルドハイブリッドである。未明の湾岸線でアクセルを踏み込めば、電気のサポートが意外な強さで背中を押す。ディーゼルのような重厚さは感じられないが、その分鼻先は軽くなり、PHCサスペンションの動きを鮮明に引き立てている。
バッテリー横の制御ユニットが、新採用のe-DCS6(6速デュアルクラッチトランスミッション)とモーターの連携を司る。発進・低速時のモーター駆動により、ストップ&ゴーの多い市街地でもストレスのない走りと環境性能を両立させている Photo by F.Y.
一筆書きを終えて3号渋谷線の用賀出口を下りる頃、空が白み始めていた。約150キロを走り終えてなお、身体には疲れのかけらも見当たらない。もちろん腰も痛くない。
ポワシー工場が翻弄され、生産拠点はフランスから出て、エンジンから軽油の匂いが消えた。だがこのシートが提供する「揺るぎない安らぎ」こそが、場所を選ばずして発現するシトロエンの、あるいはフランスという国の文化がシートに捧げる最後の矜持なのではあるまいか。効率一辺倒の現代において、この「見えない密度」と「知的な電動化」にカネをかける贅沢。それこそが新型C3を選ぶ最大の理由になろう。
リアシートをたたむと、このような段差が…… Photo by F.Y.
もともと左ハンドル車なので、ボンネットオープナーは助手席側にある Photo by F.Y.
それでは最後にこのクルマの○と×を。







