答えを探すのではなく、良質の問いを探すこと
定年に向けた準備には、良質な問いを探すことが大切であり、そうした観点から、鵫巣さんが執筆した書籍が『50代からの人生をマネジメントするドラッカーの問い』である。
鵫巣 ドラッカーは『現代の経営』の中で、「戦略的な意思決定では(中略)、初めから答えを得ようとしてはならない。重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである」と述べています。定年に向けた準備においても、答えを探すのではなく、良質の問いを探すことが大切だと思います。そこで、問いの宝庫とも呼べるドラッカーの書籍の中から、私が参考になると考えた13の問いを取り出したのが『50代からの人生をマネジメントするドラッカーの問い』になります。
書籍にある13の問いの中の1つが「どのような貢献ができるか」である。「貢献」をキーワードに、鵫巣さんがシニア社員に伝えたいことを語ってもらった。
鵫巣 多くの企業のホームページには「私たちは世の中の○○○○に貢献する企業です」のように書かれていますが、日々の仕事の中で「貢献」という言葉が使われることはほとんどないと思います。しかし、社会から貢献が認められているからこそ企業は存在を許され、働く人も組織に貢献しているから認められているわけです。その意味で、自分がどのように貢献しているのかを振り返ることは重要です。
特に20年、30年と働いてきたシニア社員には、多くの経験や知見が蓄積されています。しかし、会社という温室にいると、それが当たり前になり、自分の価値に気づきにくくなります。実際には、そうした経験や知見を必要としている経営者や個人事業主は多く存在し、シニア社員自身も活躍の場を求めています。それにもかかわらず、定年や再雇用の流れの中で徐々にフェードアウトしてしまうのは非常にもったいないことです。ドラッカーも指摘しているように、貢献に焦点を合わせることで目標を正しく高く設定することができ、自分自身の可能性を最大限に広げられます。
シニア社員は、人生の後半戦に向けてのモチベーションを高めるためにも、外に出て、自分が持っている価値を知るべきであると、鵫巣さんは説く。
鵫巣 シニア社員が貢献に焦点を当てて、自分の目線を上げるためには、自分が持っている価値を知ることが大事だと思います。ドラッカーは「貢献したいという気持ちは、人間が生まれつき持っているもの」と述べています。貢献に対価が伴うことが理想ですが、たとえそうでなくても、人の役に立つ喜びは年齢を重ねるほど強く感じられるものではないでしょうか。
ただし、その価値は社内にいると見えにくい場合があります。ある読書会の参加者は「会社の名刺には私の肩書が書いてあるが、会社を離れた個人としての私の名刺を作るとしたら、肩書を何と書けばいいのかわからない」と話していました。それを見つけるためには、会社の外に出て、他流試合を経験し、外部からのフィードバックを受けることが有効です。外からの評価をヒントにすることで、貢献という視点から自分の価値を認識し、言葉として整理しやすくなります。社内の評価だけでは気づけない可能性も、そこから見えてくるでしょう。
また、貢献を考えるうえで、「お金を稼ぐ」「成功を収める」という目線を変えることも大切だと思います。50歳くらいまでは成功を目指してよいと思いますが、そこから先は「自分の本当の価値観に基づき貢献する」という方向に目線を向けたほうが、充実した人生の後半戦を過ごせると思います。
「Prologue なぜ、人生後半のマネジメントにドラッカーの問いが役に立つのか」から始まる、鵫巣さんの著書『50代からの人生をマネジメントするドラッカーの問い』 (2025年10月 ソシム刊)。








