様変わりするパワー半導体業界
欧米とも中国とも違う日本勢の“弱点”とは

 パワー半導体とは、高電圧や大電流の管理、制御、変換を行う電子部品をいう。AI(人工知能)向けのデータセンターや自動車の電動化を背景に、利用範囲は急速に拡大している。半導体分野の中でも、わが国企業が優位性をそれなりに維持してきた。

 2024年時点で、世界のパワー半導体の市場規模は710億ドル(約11兆3000億円)とみられる。シェアトップ企業はドイツのインフィニオン(シェア17.4%)だ。2位は米オン・セミコンダクター(同8.5%)、3位はスイスのSTマイクロエレクトロニクス(同6.9%)、4位に三菱電機(同4.6%)がランクインする。東芝は10位(同2.6%)、ロームは12位(2.5%)だ。つまり、日本の3社が統合すれば単純計算で2位に躍り出ることになる。

 近年はパワー半導体の電圧、熱などへの耐性を高めるため、製造技術が変化している。従来は基盤にシリコンを使うものが主だった。それが現在では、SiC(炭化ケイ素)を使うチップ製造にシフトしつつある。ロームは、SiCパワー半導体の製造に競争力を持つ。

 日米欧のパワー半導体メーカーを急速に追い上げているのが、中国勢だ。中央・地方政府とも産業補助金や土地の供与などを行い、短期間で大量生産体制を確立した。杭州士蘭微電子(ハンジョウ・シーラン・マイクロエレクトロニクス)、自動車大手の比亜迪(BYD)、嘉興斯達半導体(スターパワー・セミコンダクター)は、SiC(炭化ケイ素)型の次世代パワー半導体分野で急速に競争力を付けているとみられる。

 一方、欧米と比較すると、日本のパワー半導体メーカーの数は多く、各社の事業規模は小さい。三菱電機、東芝、ローム、富士電機、車載用部品分野から参入したデンソー、サンケン電気、ルネサスエレクトロニクスなどがある。大手自動車メーカーのEVシフト戦略の失敗もあり、25年3月期、ロームの最終損益は500億円の赤字だった。

 それに対し、欧米勢は事業規模の大きさを武器に、AIデータセンターなど収益性の高い分野への投資を急ピッチに積み増している。中国勢は、低コストの大量生産能力を引き上げている。

 こうした環境変化を見たデンソーは、車載用のパワー半導体分野の収益力を引き上げるため、ロームに買収を提案した。対してローム経営陣は、国内競合他社との合従連衡を模索しているという状況だ。