統合を後押しする産業政策と補助金
世界2位を目指す“逆転勝利”とは

 今回の統合案件について、政府の産業政策も再編機運に影響するだろう。国際的な半導体業界の競争激化の中で、わが国企業が生き残るために政府も連携・再編を重視するようになった。

 24年11月、デンソーは、富士電機との共同投資を発表した。その際、経済産業省は最大1017億円の補助を明らかにしている。それもあり、デンソーはロームを買収し車載用半導体のラインアップ拡充を目指しているのだろう。

 一方、ロームとの事業統合を目指す東芝は、政府の支援を受けつつ経営再建している。現在、東芝はエネルギー、水処理、鉄道など社会インフラ分野を主な収益源として重視している。

 パワー半導体の市況変動性は高い。安定した収益源を確保するため、パワー半導体事業をロームと統合する意味はあるだろう。23年12月、東芝とロームはパワー半導体の共同生産に向けた投資を発表した。ここでも政府は、最大1294億円の補助を決定した。

 また、ロームは、投資ファンドによる東芝の買収に当たり3000億円を出資した。ロームが事業規模を拡大し、競争力の回復と向上を目指す上で、政府の支援を取り付けつつ東芝との協業体制を敷く必要性は高まっている。

 三菱電機も、競争力を発揮できる分野への選択と集中という観点で、現在、ファクトリー・オートメーション関連分野を重視している。成長資金を捻出するために、自動車関連分野などではリストラを断行してきた。パワー半導体を分社化し、他社と統合することは、自社の収益性の向上にプラスと判断したのだろう。

 3社のパワー半導体統合が実現すると、三菱電機、東芝、ロームのシェア合算は世界2位になる。収益分野は自動車、産業、その他が3分の1ずつと多角化し、リスクを分散できる。これが、基本合意に至った背景にある。