入団時の契約金は
貯めずに自己投資に回した

 埼玉西武ライオンズに入団したときからの僕の夢は、プロ野球で大活躍し、メジャーリーグに挑戦することでした。もちろん、そこには「これぐらいはもらいたい」という具体的な年俸の目標もありました。そして、このメジャーに行くという目標を叶かなえるためなら、時間もお金も惜しまないと心に決めていました。

 多くの人は、入団時にもらう契約金に対して「退職金のつもりで、使わずに貯めておけ」と言います。実際、入団直後に球団が保険会社を呼んで、契約金に手をつけないように貯蓄を勧めてくれる仕組みもありました。しかし僕は「この契約金は、球団が僕たちの将来性に期待してくれた『能力開発費』ではないのか」と考えました。僕がもらったこの1億円を使い、自分の能力を最大限に高めて球団の戦力となり、そしてメジャーに行く。そう考えることにしました。

「時間とお金を集中投下して、もし芽が出ずに失敗に終わったら……。そのときは、自分は野球に向いていなかったのだと思うしかない」

 そう腹を括った僕は、怪我予防の高額な治療機器を買い、1年目から専属トレーナーを複数名つけました。自主トレも暖かい気候を求めて、沖縄を中心に行なっていたため、多くの経費が必要でした。プロ6年目になると、往復で2時間半もかかる自宅から西武ドーム(当時はメットライフドーム)までの通勤時間を英語の勉強に充てるため、運転手を雇うことにしました。

 当然、当時の僕の年俸からこのすべてを負担できるわけではありません。契約金を切り崩しながらの生活でした。僕は7年目に結婚したのですが、妻に貯金がほとんどないことを正直に伝えました。すると彼女は笑って「あなたらしいじゃん。絶対に夢を叶えようね」と言ってくれたのです。この一言にどれだけ救われたかわかりません。

 結果的に、あのときの「能力開発費」は実を結び、僕は夢を叶えることができました。そしてメジャーに来てからは、さらに自分の能力を高める必要に迫られ、環境への投資を加速させました。