実際は、むしろ先物市場こそが基本的な市場であり、そこで決まった先物価格を基にして、現物市場の価格が決まるという見方も可能だ。

 先物市場が基本になる理由は、先に述べたように、先物市場への参加が容易であり、そのため市場の厚みがあることだ。

 先物市場で成立した価格が現物市場の価格に影響を与えるというと、本末転倒であるような印象を受けてしまうが、決してそうではない。

 先物市場で、十分な流動性と多数の参加者によって客観的な価格が形成され、それが裁定条件を通じて現物市場での価格を適切なものにしていくという関係は、当然考えられるものだ。つまり、まず先物市場があり、それが裁定条件を通じて現物価格を決めるという考え方はあり得るものだ。

80年代から投機的要因が入りやすく
ガソリン補助金の仕組み、再検討の余地

 先物取引には多数の参加者がいるため、客観的な価格が形成されると述べたが、別の面もある。それは投機的な要素が価格を動かしてしまうことだ。

 特に現在のように事態が大きく変化している場合には、些細な情報によっても、事情が大きく変化し、価格が大きく変動し得る。その価格差を狙って投機的な動きが起きている可能性がある。

 これを考えれば、現在生じているガソリン価格の変動は、過度の変動である可能性も十分にあり得る。

 WTI原油先物市場が創設されたのは1983年のことだ。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場され、アメリカの代表的な高品質原油の指標として世界的な影響力を持つようになった。

 WTI先物市場が導入されたことによって、原油価格やガソリン価格の決定メカニズムは、大きく変貌したといわれる。

 大きな変化は、原油の価格形成で、それまでのさまざまな市場に比べて、参加者が大きく拡大し、しかもさまざまな要素が考慮されるようになったことだ。原油が金融商品と同じような性格を持つようになってきたのである。

 それはある意味では望ましいことなのだが、同時に、投機的要因が価格変動をより大きくしたという側面があるかもしれない。われわれが、いま見ているのは、そのようなメカニズムが引き起こした問題である可能性がある。

 これは、ガソリン価格補助政策のあり方についても、関連がある。日本ではガソリン価格引き下げのための補助政策が行われているが、補助金の額はガソリンの市場価格に連動するようになっている。

 ところが、ガソリン市場価格が投機的要因によっても変動するのであれば、補助金の額も投機的要因で変動することになる。こうした仕組みが望ましいかどうかについて、検討の必要があるのではないか。

(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)