イラン「原油価格は200ドルに」と警告
トランプを見透かし、世界経済をも人質に

 イラン戦争について、事態が好転する可能性はゼロではない。しかし、トランプ氏の言動がしょっちゅう変わるので、イランとしても休戦に応じることは難しいはずだ。

 トランプ氏は今年秋の中間選挙を控えて、できるだけ早くイラン戦争から手を引きたいはずだ。長期化すればするほど、支持率にはマイナスの影響が出る。

 一方のイランは、そのようなトランプ氏の事情を十分に理解しているだろう。イランは、米国を地上戦に引きずり込んで戦争の長期化を狙うはずだ。その結果、イラン戦争終結の構図は描くにくくなっている。

 戦争終結もさることながら、重要なポイントは、ホルムズ海峡をはじめ中東海域での船舶航行が開戦以前の状況に戻るか否かだ。機雷の敷設があれば、ホルムズ海峡やペルシャ湾が短期間で以前の状態に戻るとは考えにくい。

 イランはイエメンのフーシ派に、紅海での攻撃を行うよう要請したと報じられた。懸念されるのは、石油の代替供給経路の要衝である、サウジアラビアのヤンブー港への影響だ。同港はフーシ派のミサイル射程内に入っているといわれている。

 ホルムズ海峡を通らず原油を運ぶために、サウジの東西パイプラインはフル稼働している。その上で、中東産油国はヤンブー港から原油を積み出し、世界に供給し始めた。3月下旬での供給量は1日当たり約500万バレル。戦争前に1日当たり約1500万バレルが通過していたといわれるホルムズ海峡には遠く及ばない。

 供給量が減少したまま、紅海周辺のエネルギー関連インフラにまで攻撃が及べば、今よりもさらに世界経済への打撃は深刻化するだろう。米国が撤退したとしても、イスラエルがイランや親イラン勢力への攻撃を激化させ、事態が混迷する恐れもある。

 トランプ氏はイラン攻撃によって、世界のパワーバランスを完全に崩した。安全保障の専門家からは、今後、数世代にわたって影響が残るとの見方も出ている。

 3月中旬、イラン軍中央司令部の報道官は、「原油価格は200ドルに達するだろう」と警告した。イランはエネルギー資源などの供給にとどまらず、世界経済をも人質に取ったといえる。欧米の経済の専門家らも、このシナリオが否定できないと警戒している。