韓国では節約呼びかけ、豪州は無利子融資
高市政権、最悪のリスクに備えるべき

 今のところ高市政権は、国民に対してイラン戦争に関連するリスクの所在や、それに対する具体的な対応策について、国民に分かりやすく伝えていると言い難い。そうしたスタンスについて、不安を感じるのは筆者だけではないはずだ。

 欧州では、トランプ氏に懸念を表明する首脳が増えている。フランスやドイツは、イランと協議を重ね船舶航行の実現など、自国の経済安全保障体制に必要な取り組みを進めている。フォンデアライエン欧州委員長に至っては、脱原発の誤りを明確に認めた。欧州では、再生可能エネルギー利用に向けた議論も急加速し始めている。

 韓国では、李在明大統領が「燃料の一滴一滴を節約し、公共交通機関を使ってエネルギー危機に対応しよう」と国民に呼びかけた。大韓航空は緊急経営体制に移行するなど、モノやサービスの不足、価格高騰への対応が急ピッチで進行中だ。

 オーストラリアも緊急対策を発動した。政府は企業の資金繰り支援に10億豪ドル(約1100億円)の無利子融資を発表。輸送業者や肥料メーカーなどの支援を万全にする。中央銀行は追加利上げも実行した。一部では、パニック的な燃料の争奪戦も起きているという。

 今現在、高市政権はそうした姿勢を見せていない。石油備蓄の放出は、一時しのぎでしかない。ナフサ不足あるいは価格高騰は、レジ袋からインスリン注射器まで影響が及ぶ可能性があり懸念が高まっている。ゴールデンウイークや夏のお盆休みなど、連休中の航空運賃などの値上がりを警戒する人も増えた。

 ただでさえ、4月1日に値上げした食料品や生活用品は多い。イラン戦争が長期化し、日常生活に重大な制約が及ぶと身構える人は増えている。それは、わが国の経済・社会に多大な悪影響をもたらすはずだ。景気の先行きが不安になると、個人消費や設備投資が落ち込むことも考えられる。

 食料、石油、LNG、アルミ、ナフサやエチレンの不足は、経済活動を阻害する。それが現実になれば、人々はパニックに陥ることも想定される。そうしたパニックを防ぐためにも、イラン戦争のリスクと対応策を、今のうちから国民に分かりやすく伝えておくのが重要なはずだ。「転ばぬ先の杖」の発想が、高市政権に必要ではないだろうか。

真壁昭夫さんのプロフィール