メディアからの注目度も上がっています。しかし、発信される情報には研究機関や養殖企業の利益に配慮したポジショントークも多く、未完成な技術が誇張して取り上げられがちです。例えば養殖クロマグロの人工種苗は実用レベルに到達しておらず、未だに天然種苗に頼っていますし、ウナギの完全養殖は完成したかのような報道がある中、商業化の水準に到達できるかどうかは未知数です。
養殖技術が完成しても
黒字化しなければ意味がない
そもそも完全養殖する必要があるかどうかさえよく分からないこともあります。「産業的成功」という事実がないまま、単に実験に成功しただけであたかも養殖が成功したかのような取り上げ方をされています。
「漁業より養殖業の方が環境に良い」「これからは原始的な漁業ではなく近代的な養殖が発展する」「漁業は儲からないが養殖業は儲かる」「マグロやウナギが減っているなら養殖すればいい」「食料問題は養殖の技術を発展させれば解決する」といった偏った見解や事実を誤認したコメントを真に受ける消費者がほとんどでしょう。
しかし養殖業はそれほど簡単なものではありません。原料になる餌が高い、種苗の供給が足りない、新規漁場がない、赤潮や水温上昇で生残率が下がる、魚病が克服できない、など根本的な課題を未だに解決できておらず、見通しは決して甘くはありません。期待するのは分かりますが、課題の多い、発展途上の産業なのです。
無邪気で希望的な観測にすぎない記事や幻想に満ちたコメントをウェブ上で数多く見ますが、正しい情報に基づかないものばかりです。養殖業の経済研究は筆者が専門とする分野の1つで、メディアからもこの種の取材依頼が急増しています。
しかし、大半の記者が魚類養殖業に誤解や過剰な期待を抱いていて、現実の経営状況や不確実な将来性について話をすると、「それでは記事にならない」と嘆くのです。養殖業は水族館経営とは違います。飼育技術が完成してもそれだけではほとんど意味がないのです。加えて生産コストや採算性を考えれば、養殖業ほど難しい食品ビジネスはないかもしれません。







