原因は、その問題が数のうちに入れられていないことの扱いにあります。完璧な備えのためには、多くのことを前提に備えをしておきたいものの、発生確率が低いものはコスト削減のためにとりあえず外すというのがよくあるやり方です。

 生命保険や損害保険に入るときに、フルスペックだと保険料が高くなるので、基本となるものだけをカバーして、オプションは一切付けないようなものです。

 発生確率と費用対効果を検討してそうしているだけで、リスクそのものは依然としてあります。便宜上、「とりあえず考えなくていい」という扱いにしているだけですが、そこに触れると面倒なことになるので、組織の中で「考えてはいけないこと」というふうにすり替わることがあります。

 数のうちに入れるとコストの問題が出てくるので、「ないことにしたい」というのが転じて、「絶対にない」としてしまうのです。実際にはリスクは残っていて、本当は100かゼロで考えることができないのに、無理やりそのように評価しているのですからかなり歪んでいます。

すべての災害を防ぐのではなく
被害を減らすという考え方

 問題が起こらないうちはいいものの、顕現したときには当然、大きなダメージを受けます。しかも、数のうちに入れていなかったことが災いして、被害やその後の復旧にかかるお金が甚大になるというのが、よくある大失敗のパターンです。

 こういうものへの対処は、柔軟に行ったほうがうまくいきます。最初からわかっていることは、なんでも取り入れておいたほうがいいのです。ただし、正規のルートで扱うとコストがかかるので、予備のルートを設けて、そちらで扱うのが適当です。

 災害対策には、こうした発想で行われているものもあります。遊水池などがそれです。

 河川は許容量を超える水が流れると氾濫して大きな被害を発生させるので、これを防ぐために一時的に水を貯めることができる場所を用意して、流量をコントロールしています。大雨のときにはそういうところでわざと越流を起こさせて本流の水量を減らし、人がたくさん住んでいる場所での氾濫を防いでいます。