イラン戦争で浮き彫りになったAIの功罪

 第1次AI戦争とも呼ばれるイラン戦争で、私たちはどんな点を確認すべきだろうか。まず、AIを利用することで、ある意味で戦争は行いやすくなった。

 次にイランは、1機当たり数百万円といわれる安価なドローンで、米・イスラエルに対抗した。ロシアや中国の支援を取り付け、AI兵器の性能向上にも取り組んでいるようだ。となると今回の戦争は、ロシアや中国のAIを使った軍事力の向上につなげる機会にもなっただろう。

 イランのAIドローン攻撃に対し、米国は1発6億円程度のパトリオット・ミサイルなどを使用した。しかしイランの抵抗は米国の想定を上回り、米軍が中東で運用するミサイルは不足したとみられている。

 そこで米国は、韓国などから中東にミサイルシステムを移し、イランの報復を防ごうとした。戦争発生から1カ月間で米国が負担したコストは、かつてのイラク戦争の7~11倍にも上ったとの試算もある。

 つまりAIドローンによるイランの低コスト、米国の高コストという戦争の非対称性が明確化した。米国も、イランのドローンを模倣した安価な無人攻撃システムを投入。安価なデバイスに自律攻撃を可能にするシステムを搭載するのは、兵士の負担を抑えるのにも有効だ。

 一方、AI戦争の危険性も明らかになった。最も重要な点は、一般市民が多く巻き添えになる恐れが高いことである。

 例えば2月28日、イラン南部のミナブでは、米軍の攻撃により多数の児童・生徒が死亡したと報じられた。誤爆との見方は多い。民間への被害を防ぐためには、人間の関与が欠かせないとの考えも出ている。

 イラン戦争で明らかになったAIの功罪は、私たちの生活や経済運営にも重要な示唆を与える。AIは文字、データといった形式知の処理・分析に長けている。人間以上のレベルに達している可能性も高い。そしてAIは経済や社会運営のコスト低減に寄与する。

 一方で無視できない懸念は、AIが物事の善悪を判断する能力を持っていないことだ。現時点では、倫理観を担保するために人間が果たすべき役割は依然として多いはずだ。