サブスクとレコードの広がりで
埋もれていた曲が見つかる時代へ

『真夜中のドア』を始め、海外で注目を集める日本のシティポップ。村井氏によると、シティポップに加えて“和ジャズ”が新たに注目を集めているという。

「今は、日本のフュージョンが海外でブームになっています。特に高中正義さんやCASIOPEAの楽曲はアメリカやヨーロッパで人気が高いです。島国である日本人ならではの演歌のような曲調やコードの感性とジャズが混ざることによって、独特なメロディーが生まれる。これは海外の方にとって新しい感覚だと思います」

 これらのジャンルにはサブスクで未解禁の楽曲も多く、そうした作品へのアクセス手段として、アナログレコードの需要が高まっているという。

「弊社としては“和ジャズ”には力を入れています。1970年代から80年代にかけて日本のジャズ・シーンを牽引した、スリー・ブラインド・マイスという伝説のジャズ専門レーベルがあり、そこからリリースされた楽曲の復刻に力を入れています」

 日本の音楽は海外で再評価され、グローバルな音楽市場の中で新たな居場所を獲得し始めた。海外で注目されることにより、逆輸入的に日本で再注目される現象も起こる。これには、YouTubeやSNS、サブスクなどの影響を無視できない。

「弊社で1994年から1996年にかけて活動していたポップスグループのSATELLITE LOVERSは、海外のファンによる動画をきっかけに、アメリカを中心に再生回数を伸ばしました。サブスク配信もMVもなかったのですが、当時のマネージャーから『正規にサブスクの配信をしてください』と連絡が来たほどです」

 サブスク配信を開始後、CDの販売からアナログ盤の販売まで決定。アナログ盤は即日完売、さらに追加生産にまで至ったそう。本来、権利処理が行われていない投稿は認められるものではないが、こうした動きが海外での認知拡大に影響を与えたことも事実だ。

「ソニーミュージックのオンラインショップでは海外から直接購入することはできませんが、輸出を通じて海外の販売サイトなどから購入できるようになっています。そこから購入されている方も多く、以前に比べて販路が広がったことが、生産増加にも大きく影響していると感じています。今後は、さらにアメリカやアジア、ヨーロッパなどへの販路拡大を進めていく考えです」

 サブスクリプションやCDの普及によって、これまで埋もれていた日本の音楽が世界へと発信される時代となった。そうした流れの中で、アナログレコードというオールドメディアの広がりは、日本の音楽の新たな可能性を示している。