この背景には、平成期以降に広がった「保険の見直し」意識がある。かつては就職や結婚といったライフイベントに合わせて保険に加入するのが一般的だったが、「入りすぎではないか」という議論が広まり、保障を減らす動きが強まった。

 さらに、共働き世帯の増加や営業への心理的な距離感も影響し、「必要最低限だけ入る」という考え方が定着していった。その結果、保障の量は保たれているものの、質が薄くなってしまったのである。

 見方を変えれば、このギャップは大きなビジネスチャンスでもある。顧客自身が気づいていないニーズをどう掘り起こすかが、今後の重要なテーマとなる。

デジタルと金融の知識を
融合できる人材が求められる

 こうした環境変化を受けて、保険業界が求める人材像も変わりつつある。

 まず挙げられるのが、デジタルやAIの活用に関するスキルである。顧客の行動履歴や関心データを蓄積し、それを分析して最適な提案につなげる。こうした取り組みはすでに始まっており、営業の在り方そのものを変える可能性を持っている 。

 AIは単なる効率化ツールにとどまらない。営業担当者の提案をサポートしたり、顧客ごとのニーズを可視化したりと、人の判断を補強する役割としての期待も大きい。そのデータを使いこなせるかどうかが、今後の競争力を左右するといっても過言ではない。

 次に重要なのが、金融全般に対する理解である。保険単体ではなく、株式や年金、さらには医療や介護といった社会保障制度まで含めて、顧客の人生設計をトータルで支える視点が求められている。

 特に近年は金利環境の変化により、金融商品全体が再び注目されている。その中で「なぜ保険が必要なのか」を説明できる人材の価値は、これまで以上に高まっている 。

 さらに、海外展開の進展も人材要件に影響を与えている。すでに収益の多くを海外で稼ぐ企業もあり、今後はグローバルな舞台で活躍できる人材の重要性が増していく。語学力はもちろん、新しい環境に挑戦する姿勢そのものが評価される時代になっている。

 これまでの保険業界は、長期的に安定したビジネスを展開してきた。一方で、低金利の長期化や市場の成熟により、大きな成長を描きにくい時期が続いてきたのも事実である。

 しかし今は、その前提が少しずつ変わり始めている。金利の回復は商品開発の自由度を高め、デジタル化は営業の在り方を変え、海外市場は新たな成長の場を提供している。

 課題は多いが、それ以上に「選択肢」が広がっている。これからの保険業界は、「安定しているかどうか」ではなく、「変化にどう対応できるか」が問われる業界になっていく。そうした意味で、今はむしろ面白さの増しているタイミングともいえる。

(ニッセイ基礎研究所 上席研究員 有村寛氏への取材を基に編集チームが構成)

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