血液がんの一種である悪性リンパ腫の一部、特に、中国南部で発生する悪性リンパ腫にはEBウイルスが関与しており、胃がんの一部にもEBウイルスの関与が疑われている。成人T細胞白血病は、日本の風土病ともいわれる特殊な白血病で、HTLV-1というウイルスが原因である。

 このウイルスに感染した母親から授乳されている乳児が感染し、そのごく一部が長い年月のあと、白血病を発症することが明らかにされた。そこで、感染している母親の母乳を乳児に飲ませないという予防法が確立されている。

 寄生虫に関しては、東南アジアに多く生息している肝吸虫が胆管がんを引き起こすことが知られている。

 このようにがん化の要因は様々であるが、発がん物質を避けたり、感染症に対処したりすることによって、多くのがんの予防が可能となっている。

がん細胞にも“個性”があり
治療法は細分されるようになった

 医療の現場では、がんは、主に病理診断により、がん細胞の顔かたちをもとに判定された組織型による分類が、治療に用いられてきた。たとえば、肺がんであれば、主な組織型である腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんなどに分けられ、それぞれに特有な治療方針を設定してきた。

 その後、がん細胞が持つ様々な機能に注目し、個々のがんの本態に迫る分類が始まった。これが、がんの生物学的特性に基づく分類である。このように、同じ形態のがんでも、細胞分裂速度、浸潤・転移の起きやすさ、薬の効きやすさなどで評価される「がんの特性・個性」を明確にし、診断や治療に反映させる取り組みが進められてきた。

 近年、この分野は大きく発展した。がんゲノム医療が進歩し、個々の患者でがん化の原因となる遺伝子異常が特定され、その一部について有効な薬剤が臨床応用されるようになった。その成果によって、がんの個別化医療や精密医療という新しい分野が確立された。

 たとえば、肺がんの1つの組織型である腺がんでは、現在、その原因となる遺伝子異常が10種類近く特定され、進行・再発がんでは、それぞれの異常を対象に開発された薬剤(分子標的薬)が効果を発揮している。