遺伝性がんはわずか5%
大多数は遺伝しないがん
図表2-10に示すように、がんの大多数を占める一般のがんは、人間として誕生したあと、身体を形作る1つの細胞に起きたゲノム・遺伝子変化が原因で生じる。両親からゲノム・遺伝子変化を引き継いだわけではなく、患者の子孫にもその変化を伝えないため、その患者ひとりだけの「孤」の病態として「孤発がん」と呼ぶこともある。
また、この場合のゲノム・遺伝子変化は、精子や卵子のような生殖細胞ではなく、患者の身体を形作る体細胞のみに生じた変化として「体細胞系列のゲノム・遺伝子変化」と称される。
同書より転載 拡大画像表示
これに対して、両親の生殖細胞、すなわち男性の精子や女性の卵子に細胞のがん化を引き起こすゲノム・遺伝子変化が存在し、それが受精卵を介して生まれた子どものすべての細胞に受け継がれ、後に高頻度にがんを発生させる「遺伝性がん」が、がん全体の5%程度存在する。
生殖細胞を介して、親から子へ伝わることから、この場合の遺伝子変化は「生殖細胞系列のゲノム・遺伝子変化」と称される。
一般のがんの発生には約1000種類のがん関連遺伝子が関わっている。遺伝性がんは、親が、このうちの数十種類の遺伝子のあるものに生まれつき変化を持っており、それが子に受け継がれ、子ががんを発症する病態である。
代表的な疾患としては、BRCA1/BRCA2遺伝子の変化による遺伝性乳がん・卵巣がん症候群やAPC遺伝子の変化による家族性大腸ポリポーシス、あるいは数種類のDNA修復遺伝子の変化により大腸がんや子宮体がんが発生するリンチ症候群などが知られている。
遺伝性がんかどうかを
見極めるポイントとは?
世間では、「自分の父ががんで、4人の兄弟のうち2人もがん。だから自分は確実にがん家系だ」と考える人が多い。しかし、超高齢社会では、一生のうちに、2人に1人はがんと診断される。従って、この場合のがん発生の確率は、一般的な日本人の家系でも起こるので、必ずしもがん家系とはいえない。
一方、遺伝性がんの家系図も「父あるいは母ががんで、4人の子どものうち2人もがん」と表現される。ところが、がん専門医であれば、家族歴、病歴、症状を確認した段階で、すぐに遺伝性がんを疑う。その特徴としては、第1に、血縁者に珍しい種類のがんが集積する、第2に、発病年齢が一般のがんに比べて若い傾向があり、20歳代、30歳代の発病がまれではない、第3に、同一患者で異なる臓器にがんが発症することが多く、同じ臓器内にも多数の病変が出現する、などを挙げることができる。
そのうえで、遺伝カウンセリングのあと、遺伝子診断を実施し、確実に診断することが可能となっている。
『高齢者とがん』(山口 建、中公新書)







