デジタル化の成功例は
メディアで報じられるが…

 近年、デジタル化に成功した企業は、「旧態依然とした企業風土から脱却した成功例」としてメディアで好意的に報じられる傾向にある。

「A社は○○というシステムを導入した結果、営業における投資対効果が20%上昇した」
「B社は○○というシステムを使うことで、マーケティングにおける費用対効果が15%改善し、人件費も下がった」

 このような事例が出回ると、「うちも他社を参考にしなければ」という経営者が増えることは想像に難くない。「他社に負けず、より良い方法を使わねばならない」という、いわば「ベストプラクティス至上主義」に陥ってしまうのだ。

 一方、デジタル化に失敗した事例や、「実はアナログな業務プロセスの方が優れていた」というケースは、訴訟やトラブルに発展しない限り表沙汰にならない。

 このように「成功例ばかりが目立つ」という情報の非対称性が、顧客企業における「デジタル化至上主義」を加速させる。それによってニーズが生まれ、多くのコンサルタントがデジタル化を勧めるという悪循環を生み出しているのである。

 ただし、デジタル化そのものを否定すべきではない。本連載で何度も述べてきた通り、クライアント企業は全てをコンサルに丸投げするのではなく、どのような施策が自社の課題解決に直結するのかを自分たちで考えるべきである。

コンサル会社からの提案は
「神のお告げ」ではない

 そのための具体的なアプローチとしては、以下の方法が挙げられる。

(1)コンサル会社の利益構造を理解する
(2)人的投資や組織文化の改革が、デジタル化と同じくらい重要であることを経営層が理解する
(3)デジタル化を推進する場合は、複数のコンサル会社から意見を聞き、自社の文化に合うファームを探す
(4)コンサル会社と組む場合も、本格的なデジタル化をいきなり始めるのではなく、事前に小規模なプロジェクトを実施し、効果を測定・検証する

 特定のコンサル会社からの提案を「神のお告げ」のように信じるのではなく、複数社からの提案を俯瞰的に見て、冷静に比較・評価できるか否かが、課題解決の成否を左右する。

 デジタル化は手段であり、目的ではない。事業会社が身の丈に合った投資を続けて着実に成長するには、こうした「批判的思考」が不可欠である。