スーパーコックの「のり唐」が
放課後の楽しみだった
将棋部の後の楽しみは、なんと言ってもスーパーコックの「のり唐」です。高校を出て坂をくだって、チャリで30分。私の家の最寄り駅前にある黄色い屋根の弁当屋が見えてくる。スーパーコック干潟駅前店です。そこの「のり唐」が、めちゃくちゃうまいんですよ。のり弁の上に唐揚げがのってるから「のり唐」というわけです。
じつはこの「のり唐」、地元の人に代々伝わってきた裏メニューなのです。ふつうののり弁は白身魚のフライが1つ入ってるんですが、それが唐揚げ2つに代わってるんですね。私の場合は、トッピングで唐揚げをもう1つ増やします。細い袋に入ったマヨネーズもつけます。米も大盛りにします。390円くらいだったかな。めっちゃボリュームあります。
発泡スチロールっぽい長方形の容器にしきつめられた、米。その上にまぶされた、オカカ。そしてその上にしかれている、のり。1枚のでかいのりじゃなくて、細長いのりが3枚だったかな。きんぴらごぼうと、大根のピンクの漬物、半分の半分くらいのサイズのちくわの磯辺揚げ。そして、でっかいもも肉の唐揚げが3つ。私はそこにマヨネーズ。
まずは唐揚げを一口いきます。そしてのりと米。その後きんぴら。また唐揚げに戻って、のりと米いって、漬物。
唐揚げ、米、つけあわせ。
唐揚げ、米、つけあわせ。
こんな楽しいリズム、なかなかありませんよ。
唐揚げの1個めを食い終わったら、磯辺揚げへ。食ってる途中でのりを箸で切っていくのが難しくなってきます。そうなったら、エイッとのりで米を巻いて食っちゃいます。最後に、のりで巻けなかったオカカごはんと唐揚げが残ります。それを大事に味わって終了です。
弁当を冷まさないために
風の向きまで注意を払う
将棋部の帰りは、学校を出た瞬間から、私の口はもう「のり唐の口」。「のり唐食いてえ」に脳が支配されます。一刻も早く食いたい。じつは高校からチャリで1分のところにもスーパーコックがあるんです。八日市場店が。でもそこで買ったら、家に着いたころにはのり唐が冷めてしまう。
だから、八日市場店はスルーする。スルーすることによって、「のり唐食いてえ」という気持ちをさらに高める。「よし、おれは今からあったかいのり唐を食うんだ」と己を奮い立たせる作業ですね。「のり唐欲」を高めていく。
「のり唐」はふつうののり弁よりボリュームがあるので、蓋が完全には閉まりません。口が半分開いちゃってるような容器を、謎のオリジナルキャラクターがプリントされた包み紙で巻いて、むりやり輪ゴムでおさえこんでいます。
『没頭飯』(鈴木もぐら、ポプラ社)
それをチャリのカゴに載せて帰るんですが、口が開いてる部分を進行方向にもってきちゃうと弁当に風が入って冷めてしまう。だから口が開いてるほうを自分の体に向けて、少しでも冷めないように急いでチャリこいでシャーッと坂をおりていくんです。カゴの中でガタガタ揺れる「のり唐」をチラチラ見ながら。ひっくり返って唐揚げ落ちんじゃねえぞと思いながら。そうして我慢と工夫と努力を重ねて家で食う「のり唐」はもう最高です。うますぎ。
この私の青春の味は、もう味わえません。スーパーコックがもうないんです。干潟駅前店も八日市場店もずっと前になくなってしまいました。
久しぶりに「のり唐」のことを思い出したら、私の口は当然のように「のり唐の口」になってしまいました。でももう食えない。こんなに食いたいのに。







