日本最古の暗号資産交換所「Zaif(ザイフ)」を運営するクシム(東京証券取引所スタンダード上場)の現役取締役が、自社の取締役交代を求める異例の株主提案を行った。この取締役がダイヤモンド編集部の取材に応じ「クシムは株主でもない者に実質的に支配されている」と暴露した。それが事実だとすれば、コーポレートガバナンスの根底を覆す。特集『上場廃止ラッシュ2025』(全11回)の#4で真相を探った。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
東証スタンダード企業で一体何が…
経営陣に反旗の取締役を独占取材
「上場会社の体裁を成してない。株主を無視した経営が行われている」。クシム取締役の田原弘貴氏がそう指摘するのは、自身が在職するクシムについてである。
クシムは1997年に創業し、99年にベンダー資格取得の学習支援ソフトウエア「iStudy」シリーズの販売を開始。2002年に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、現在はスタンダード上場。ブロックチェーンサービスを中心に事業を展開しているが、24年10月期第3四半期(23年11月~24年7月)は暗号資産評価損などで約19億円の純損失を出した。
田原氏は元々、クシムが22年に連結子会社化したブロックチェーン関連開発会社チューリンガムの創業メンバーだった。
東京大学在学中に知り合ったブロックチェーン研究会の仲間らとチューリンガムを設立し、クシムの傘下に入った後の23年1月、前任者の退任に伴いクシムの取締役CTO(最高技術責任者)に就任。チューリンガムの株式交換でクシムの1.8%の株式を保有する大株主でもある。
その田原氏が24年11月22日、自身を含む6人の取締役や監査等委員の選任を求める株主提案を行った。これに対しクシム取締役会は25日、田原氏が未公表の会社情報を外部に漏えいした疑いがあるとして、田原氏の取締役辞任勧告を決議。田原氏の株主提案に反対する一方、25年1月に開催予定だった株主総会の延期を決定した。
騒動の発端となったのは、田原氏による株主提案だ。提案の理由について田原氏は「クシムは株主でもない者に実質的に支配されている。株主価値を重視する経営体制に刷新しなければならない」と話す。
しかし上場企業が、親会社でもオーナーでもない者に支配されることが本当に起こり得るのか。そして、その支配者とは一体誰か──。田原氏の一問一答と共に次ページで明らかにする。