子どもが何かを「つらい」と言ったとき、被せるように「私はそんなのつらくなかった」と返してくる大人もいます。子どもには子どものつらさ、意見、気持ちがあるという境界線を無視しているということです。

「もやもや」や「イライラ」を
感じなくなってきたら要注意

「親子だから」を理由に許可なく身体に触れてくるのも、子どもの「いやだ」を無視する行いです。そしてたとえ子どもが「いやだ」と言わなかったとしても、「あなたの身体はあなたのもの」であることを教え、子ども自身が自分の身体を大切にできるようになるために、親子であっても勝手に身体に触れてはいけません。

 学業やスポーツ、芸術で成果を出すことを要求したり、成果を出したときだけ褒めてきたりする親もいます。これも、「世間的にわかりやすい評価を出すことがあなたの価値である」と、子どもの価値を一方的に決めつけその価値を証明することを要求する、境界線の侵害です。

 ここに挙げた例は、残念なことに決して珍しいものではなく、日常にありふれたものだと思います。あなたがもし、これらの行動をとる親に対して「もやもや」やしんどさ、あるいは「イライラ」を感じるのであれば、「私は私」を守る心の境界線がちゃんと働いている証拠です。ちゃんと働いているからこそ、それが踏み越えられて、揺らいで、壊れそうになってしまうことに「つらい」と感じることができるのです。

 ですが、例に挙げたような態度や言葉を日常的に受け続けていると、やがて「つらい」と感じることができなくなってしまうことがあります。境界線がすっかり踏みつくされて、ちゃんと機能しなくなってしまうからです。

 人は、つらい環境に長い間置かれ続けていると、その環境に慣れようとします。慣れることで、つらさを感じないようにして、そうやって生き延びようとするのです。境界線にも同じことが起きます。侵害され、踏みつけられ、揺らがされ続けると、それを「当たり前だ」と受け入れて、慣れようとしてしまうのです。