成果を出していないのに「自分はできる」と思い込む理由

 そこで参考になるのが、心理学者ノレムたちの悲観主義と楽観主義の研究である。

 ノレムとキャンターは、過去のパフォーマンスに対する認知と将来のパフォーマンスに対する期待によって、楽観主義・悲観主義をもとにした4つのタイプ分けをしている。ここでは、その中の非現実的楽観主義と防衛的悲観主義に着目したい。

 非現実的楽観主義というのは、これまで実績がないのに、将来のパフォーマンスに対してはポジティブな期待を持つ心理傾向を指す。

 これは、楽観的だが、好ましくなく適応的でないタイプと言える。実際に成果を出していないのに、自分はできると楽観視するタイプである。

 非現実的楽観主義者は、いくら注意をしても染み込まず、「わかりました」と言うものの似たようなミスを繰り返す。楽観的すぎて慎重さが足りないのだ。このように経験から学ばないタイプには手を焼くが、ここから言えるのは楽観的であればよいというわけではないということである。

 このようなタイプには、自分自身の現実を直視させることが必要と言える。

 一方、防衛的悲観主義とは、これまで実績があるにもかかわらず、将来のパフォーマンスに対してはネガティブな期待を持つ心理傾向を指す。

 これは、悲観的だが、好ましく適応的なタイプと言える。実際は成果を出しているのに、今度はうまくいかないかもしれないと悲観的になるタイプである。一般に、防衛的悲観主義者は成績がよいことが多くの研究により示されている。悲観的だからこそ慎重になれる。用意周到に準備する。つまり、将来のパフォーマンスに対して不安があり、楽観的になれないことが、成績のよさにつながっているのである。

 こうしてみると、「ポジティブになろう」「ポジティブ思考を身につければ何でもうまくいく」というようなポジティブ信仰が世の中に広く行き渡っていることによる落とし穴にも目を向ける必要があるだろう。

 実際、ポジティブと言えばポジティブなのだが、どうも思慮が足りなくて困る、あまりに楽観的すぎるんじゃないかと言いたくなるタイプがけっこういるものだ。このところのポジティブ信仰により、このようなタイプが増えているのではないだろうか。